社労士試験の独学合格は可能?難易度や合格率、合格に必要な勉強時間まとめ

2024.10.04 資格に関するコラムPR

社労士試験の独学合格は可能?難易度や合格率、合格に必要な勉強時間まとめ

社会保険や労務に関する業務で高い需要を誇るのが『社労士(社会保険労務士)』です。法律を扱う資格と言えば弁護士や司法書士、行政書士などがありますが、社労士はその中でも比較的マイナーな資格になります。そのため、「社労士試験ってどんな内容なの?そんなに難しい?」と感じている方もよく見かけます。

この記事を読めば、社労士試験の合格率や難易度、合格に必要な勉強時間の目安を知ることができます。結論から言うと、社労士試験の難易度は非常に高いです。そんな難易度の高い資格に独学で合格するためのコツも記事後半で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

社労士試験の難易度・合格率

まずは、社労士試験の合格率と難易度について解説していきます。

合格率6%前後の難関試験

社労士試験の過去10年間の合格率推移は、以下のようになっています。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和5年 42,741人 2720人 6.4%
令和4年 40,633人 2,134人 5.3%
令和3年 37,306人 2,937人 7.9%
令和2年 34,845人 2,237人 6.4%
令和元年 38,428人 2,525人 6.6%
平成30年 38,427人 2,413人 6.3%
平成29年 38,685人 2,613人 6.8%
平成28年 39,972人 1,770人 4.4%
平成27年 40,712人 1,051人 2.6%
平成26年 44,546人 4,156人 9.3%

過去10年間の合格率は2.6~9.3%となっており、平均で考えると6%前後になります。100人受験して6人しか受からない試験であり、取得難易度は非常に難しい資格と言えるでしょう。

問題の難易度が難しかったり、受験者のレベルが低かったりすると平成27年度の試験のように合格率が2.6%という低水準になることもあります。

社労士試験の合格率が低い理由

社労士試験の合格率は、他の資格試験と比較してもトップクラスに低いです。では、なぜここまで合格率が低いのか理由を見ていきましょう。

出題範囲が広い

社労士試験の出題範囲は、8科目10種類と非常に多くなっています。その出題範囲の広さにモチベーションが下がってしまい、そのまま勉強からもフェードアウトしてしまう方がいるほどです。

社労士試験の試験科目
  • 労働基準法および労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識
  • 社会保険に関する一般常識
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 国民年金法

8科目というだけでも普通の資格試験と比較しても多いですし、この科目の中でもさらに細かく内容が分かれています。一つ一つ対策していく必要がありますが、どういった時間配分で勉強していくべきなのかも分からない状態になってしまうのです。

それに加えて、単純に専門用語や法律を覚えるだけではありません。時事ニュースや、法改正に関しても十分な理解力が必要です。情報収集するための時間、その情報が本当なのかを確かめる時間もありますので、勉強時間がどんどん削られてしまいます。

科目合格がない

社労士試験は8科目出題されると前述しましたが、そのすべてで合格基準点を満たす必要があります。つまり、1科目でも合格基準点に満たない科目があると、合計点が合格基準点に届いていたとしても不合格(足切り)となってしまうのです。他の資格試験であれば、科目合格制を活用して十分な対策を練ることができます。

ただでさえ出題範囲が広くて大変な試験なのですが、満遍なくすべての科目を網羅しないといけないのです。やっと定着させたと思っていた知識も徐々に薄れていきますので、定期的に復習することも忘れてはいけません。こういった手間もあるため、なかなか合格基準点を満たすほどの点数を出せないのです。

【科目免除制度もない】
社労士試験では、いわゆる「科目免除制度」も存在していません。大学で単位を修得した、国家資格に合格したからといって、試験内容が免除されることがないのです。少しでも勉強時間を削りたい方にとっては、科目免除がないのも辛いところでしょう。

相対評価だから

社労士試験の合否は、「相対評価」にて判定されます。

相対評価よる合否判定
  • 各科目の合格基準点(足切りライン)を満たしているか
  • 総合点は合格基準点を超えているか
  • 合格基準点を満たした中で上位〇%に入っているか

上記すべてに当てはまることで、社労士試験は合格となります。つまり、試験前から合格者数はある程度決められており、いかに高得点を叩き出したとしても指定された上位〇%に入っていないと合格することはできません。イメージとしては、高校入試や大学入試のような感じです。

この相対評価の難しいところは、周りの受験者レベルによって合格基準点が変わるという点です。レベルが高くて平均点が上がれば上がるほど合格基準点が上がっていきます。5点、10点変わるようなことはありませんが、それでも油断できない試験なのは間違いありません。

試験時間が長くて集中力が切れる

社労士試験の当日は、午前中に「選択式問題」、午後に「択一式問題」を解くことになります。選択式問題は試験時間80分となっていますので、そこまで気にするレベルではありません。しかし、択一式問題は210分という長時間で実施されます。休憩時間も一切ありません。

集中力をキープするのも難しいですし、会場によっては椅子が固いこともあります。お尻や腰に痛みを感じるケースもあるため、問題を解くことに集中できないこともあるのです。普段から210分間勉強することで、試験本番でもある程度の集中力を発揮できるようになるでしょう。

社労士の試験概要

試験形式 選択式・択一式(マークシート)
試験日 例年8月
合格発表日 例年10月
受験手数料 15,000円
試験時間 選択式80分、択一式210分
合格基準 相対評価

社労士試験は毎年8月に実施され、毎年10月に合格発表が行われます。2024年は8月25日が試験日で、10月2日が合格発表日となっています。年に1回しか実施されません。受験手数料は15,000円で、非課税となっています。申込みはインターネット・郵送のどちらかの選択が可能です。

試験地は全国に19箇所あります。基本的には最寄りの会場にて受験することになりますが、会場が定員に達した場合は近隣の都道府県になる可能性もあります。1つの都道府県で複数の試験会場が用意されることもありますので、試験前にアクセス方法などをしっかりと確認しておきましょう。

試験科目は全8科目10種類

試験科目 選択式(配点) 択一式(配点)
労働基準法及び労働安全衛生法 1問(5点) 10問(10点)
労働者災害補償保険法 1問(5点) 10問(10点)
雇用保険法 1問(5点) 10問(10点)
労務管理その他の労働に関する一般常識 1問(5点) 10問(10点)
社会保険に関する一般常識 1問(5点)
健康保険法 1問(5点) 10問(10点)
厚生年金保険法 1問(5点) 10問(10点)
国民年金法 1問(5点) 10問(10点)
合計 8問(40点) 70問(70点)

試験科目は全8科目10種類あり、それぞれ選択式問題と択一式問題があります。選択式は1問5点で合計40点、択一式は1問1点の10問で合計70点が配点となっています。8科目ですが、択一式の一般常識は2科目で10点となっているため80点ではなく70点満点となっているのです。

社労士試験の合格基準点

続いて、社労士試験の合格基準点について見ていきましょう。

年度 選択式 択一式
令和5年度(第55回) 40点中26点以上かつ各科目3点以上 70点中45点以上かつ各科目4点以上
令和4年度(第54回) 40点中27点以上かつ各科目3点以上 70点中44点以上かつ各科目4点以上
令和3年度(第53回) 40点中24点以上
かつ
①:労働に関する一般常識につき1点以上
②:国民年金法につき2点以上
③:その他3点以上
70点中45点以上かつ各科目4点以上
令和2年度(第52回) 40点中25点以上
かつ
①:労働に関する一般常識につき2点以上
②:社会保険に関する一般常識につき2点以上
③:健康保険法につき2点以上
70点中44点以上かつ各科目4点以上

社労士試験の合格基準点は、選択式と択一式で異なります。全体で取らないといけない点数と、各科目で取らないといけない点数があり、どちらも基準を満たさないと合格になりません。令和2年度、3年度に関しては、選択式の合格基準点が細かく設定されていました。

毎年少しずつ合格基準点が異なっていますが、実際に合格基準点が決まるのは「採点結果が出た後」となっています。つまり、「今年の合格基準点は〇〇点だから、それを目安に勉強しよう!」ということができません。それに加えて、社労士試験は相対評価です。

選択式であれば27点以上、択一式であれば45点以上が目安となっていますが、目指すべきなのは合格基準点を満たした上で上位に入ることです。合格基準点を超えるのは当然という気持ちで勉強し、自分が取れる最大限の点数を目指すようにしましょう。

社労士試験の受験資格

社労士になるためには試験に合格する必要がありますが、実は試験を受けるには別途で資格が必要になります。それぞれの内容を簡単に見てみましょう。

受験資格 内容
学歴要件 ・大学、短大、高専等卒業
・大学(短期大学を除く)における修得単位数62単位以上
・専門学校卒業
・厚生労働大臣が認定した学校卒業
・専門職大学、専門職短期大学卒業など…
実務経験 ・公務員として3年以上の従事
・社会保険労務士や弁護士の補助に3年以上の従事
・事業を営む個人として労働社会保険諸法令に関する事務に3年以上の従事など…
指定の国家試験合格 ・司法試験予備試験などに合格
・行政書士試験に合格
・弁護士
・公認会計士(旧公認会計士試験第1次・第2次試験を含む)
・不動産鑑定士(旧不動産鑑定士試験第1次・第2次試験を含む)など…
出典:社会保険労務士試験オフィシャルサイト「受験資格について」

学歴要件

大学や短大など、指定された学校を卒業することで受験資格を得られます。もし大学在学中だったとしても、62単位以上を修得していれば受験することが可能です。短大・専修学校の場合も、条件を満たすことで受験資格を得ることができます。

ただし、これらの受験資格を証明するためには、指定された証明証を提出する必要があります。それぞれ必要になる書類は異なりますし、提出期限も設けられています。学歴要件で受験する場合は、事前に必要書類を集めておきましょう。

高卒の場合、社労士試験の受験資格として認められません。そのため、高卒で社労士試験を受けたい場合は「実務経験を積む」か「他の国家試験合格」にて受験資格を得る必要があります。高卒で多いのは、「行政書士試験に合格」による方法です。

実務経験

指定された実務経験を積むことで、受験資格を得る方法です。公務員として3年以上や社会保険労務士の補助に3年以上など分かりやすいですが、「自分の実務経験で受験資格になるのか?」と疑問に感じている方もいます。不安な方は全国社会保険労務士連合会に問い合わせてみましょう。

上記の表以外にも実務経験として認められている業務はあります。いずれも3年以上の従事が必要になりますが、細かい内容はそれぞれ異なるため事前確認が大事です。

実務経験として認められるもの

  • 日本郵政公社の役員または職員
  • 労働組合の専従役員
  • 全国健康保険協会または日本年金機構の役員または従業員など

指定の国家資格合格

厚生労働大臣が認めている国家資格に合格した場合、社労士試験の受験資格として認められます。ただ、司法試験や公認会計士試験の難易度は非常に高く、勉強時間の目安も3000時間以上と膨大です。そのため、この2つに関しては受験資格目的での取得はおすすめできません。

この中だと行政書士試験が比較的合格しやすいです。それでも合格率は15%前後しかありませんし、勉強時間も600~1000時間と社労士とそこまで変わりません。そのため、国家資格による受験資格は「認められている資格を取得していた方が社労士資格も欲しくなった」というケースで活用されることが多いです。

社労士試験の独学合格はかなり難しい!

ここまで社労士試験の合格率などを解説してきましたが、社労士試験を独学で合格するのはハッキリ言って難しいです。大学などで法律を中心に学んでいれば基礎ができているため可能性はありますが、事前知識がまったくない初学者の場合、合格の可能性は限りなく低いでしょう。

社労士試験に必要な勉強時間

社労士試験合格のために必要な勉強時間の目安は「800~1000時間」とされています。1日2時間勉強した場合は13~17ヶ月前後、1日3時間勉強した場合は9~11ヶ月前後で合格に必要な知識自体は身に着けることが可能です。

国家資格 勉強時間(目安)
社労士 800~1,000時間
公認会計士 3,000~4,000時間
司法書士 3,000~4,000時間
税理士 2,000~3,000時間
行政書士 600~1,000時間

他の国家試験と勉強時間を比較した場合、社労士試験は短い部類に入ります。800時間以上と聞くと多いように感じますが、3000時間以上の勉強が必要な資格があると聞いてしまうと、社労士試験が簡単な試験だと勘違いしてしまいますね。

しかし、勉強時間が800時間だからといって合格するためには上位に入る必要があります。他の方が落としそうな科目でも得点できるように、ひたすら勉強を繰り返す必要があるでしょう。過去問や問題集を繰り返し解いて、他の方にはない強みを手に入れる必要があります。

平均受験回数は4回前後

確実な合格基準点は採点しないと分からない、足切りが存在している、相対評価などさまざまな理由から、社労士試験に合格するためにかかる受験回数は平均4回とされています。1年に1回受験するのであれば、平均4年はかかるということです。

もちろん1回目の試験で合格する方もいますし、逆に5回以上受験しても合格できない方もいます。回数制限はないため納得いくまで受験できますが、仕事を疎かにしないことも重要です。将来のことを考えた場合、自分の中で「〇回目までに合格できなかったら諦める」とルールを決めるのも良いでしょう。

社労士試験を独学で合格するためのおすすめ勉強法

社労士試験の独学合格は難しいですが、それでも挑戦したい方は以下のような点を意識して勉強してみましょう。

  • 学習スケジュールをしっかり立てる
  • テキスト選びは慎重に行う
  • 参考書を読んでから問題集に解答する
  • 頻出問題は反復勉強する

まず大事なのが、学習スケジュールを組み立てることです。勉強時間の目安が800時間以上となっていますので、合格目標から逆算して正確なスケジュールを考えてみましょう。「必ず1日〇時間は勉強する」のような、自分だけのルールを作るのも効果的です(やり切れる内容にする)。

市販テキストの数は多いですが、自分の知識レベルに合ったものを選ぶようにしましょう。初学者が中上級者用のテキストを購入しても逆効果です。パッと読んで理解できる内容のテキストを選び、問題集も基礎知識から解けるものを選ぶのがおすすめです。

問題集を解く場合は、必ず参考書を読んでからにしましょう。知識をインプットしないまま問題集を何回も解いたとしても、それが定着することはほとんどありません。そして、問題集を中心に取り掛かる時期になったら、頻出問題を繰り返し勉強していきましょう。それに慣れるだけで得点源になりますよ。

短期合格・独学に自信がない方は通信講座も検討しよう

社労士試験を独学合格するのは非常に難しいです。そのため、もし金銭的余裕があるなら『通信講座』の利用がおすすめです。

通信講座の特徴
  • 周りのレベルに合わすことなくマイペースに勉強できる
  • スマホがあれば移動中、休憩中などのスキマ時間で学習可能
  • 学習カリキュラムは講師陣が作成してくれる
  • モチベーション維持のためにサポート制度が充実している
  • 受講料が高い資格のためキャンペーンや割引制度を活用する

通信講座であれば、周りの目を気にすることなく勉強を始めることができます。資格予備校だと周りのレベルに置いて行かれることがありますが、自分のペースで進められるのが通信講座の強みです。スマホがあれば、ちょっとしたスキマ時間を活用して勉強することもできますよ。

社労士試験は出題範囲が広く、足切りもあるため満遍なく勉強する必要があります。通信講座では学習カリキュラムを講師が作成してくれますので、効率良く各科目を制覇することが可能です。テキストや映像講義の質も予備校とほぼ変わりません。

質問制度があるためすぐに分からない部分を解決できますし、不安な方はカウンセリング制度を使って相談することもできます。このように、サポート制度が充実しているのも通信講座ならではの強みと言えるでしょう。

唯一のデメリットとしては、受講料がかかってしまうという点です。通信講座によって料金に大きな差があり、高いとこだと20万円を超すこともあります。もし少しでも安く抑えたい方は、元の受講料が安い通信講座を選ぶか、キャンペーンや割引制度が充実している通信講座を選ぶようにしましょう。

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