行政書士試験の独学合格は可能?合格に必要な勉強時間と難易度まとめ

2024.10.04 資格に関するコラムPR

行政書士試験の独学合格は可能?合格に必要な勉強時間と難易度まとめ

「行政書士試験は難しい…」というイメージを持っている人は多いです。行政に関わる仕事ですので知識量も相当なものが要求されますが、将来のことを考えて取得を目指す方もいます。少しでも合格率を上げるためにも資格予備校を利用する方もいますが、時間面・金銭面で独学による合格を目指す方もいるでしょう。

この記事を読めば、「本当に行政書士試験って独学で合格できるの?」という疑問を解決できます。仮に合格できる場合には、どのようなことに注意しながら勉強していくのか、どのくらいの勉強時間を確保すべきなのかについても詳しく解説していきます。

行政書士とは

そもそも行政書士とは、法律を取り扱う国家資格のことです。「官公署に提出する許認可などの書類作成・手続きの代行」が主な業務となっています。書類数が非常に多く、ミスのない書類を作成するために専門知識を有した行政書士が必要になるのです。

  • 官公署に提出する書類の作成
  • 権利義務に関する書類の作成
  • 事実証明に関する書類の作成

上記3つは行政書士にしか行えない「独占業務」となっています。こういった業務を行うために行政書士がおり、企業からも重宝されている存在なのです。ただ、試験難易度もそこそこ高いため気軽になれるようなものではありません。

名称が似ているため「司法書士」と比較・混同されがちですが、試験難易度も取り扱う業務内容もまったく異なります。司法書士の方が試験難易度も圧倒的に高く、仕事をしながら気軽に合格を狙うことはほぼ不可能です。

行政書士になる方法

行政書士になるルートは3つあります。

行政書士登録した方のルート

登録資格 解答人数 割合
行政書士試験合格 2,971人 68.5%
行政事務 674人 15.5%
弁護士 7人 0.2%
弁理士 8人 0.2%
公認会計士 14人 0.3%
税理士 583人 13.4%

①:行政書士試験に合格する
最も分かりやすく一般的なのが、「行政書士試験に合格する」というルートです。日本行政書士連合会が実施したアンケート結果によると、行政書士登録している内の約7割がこの試験合格ルートを選択していました。とくに難しいことを考える必要もなく、試験に合格するだけというシンプルさが人気なのでしょう。

ただし、法律を取り扱うため試験範囲は広く、簡単に合格できるようなものではありません。合格するのに何回も挑戦する人もいますし、独学では難しいと感じて資格予備校や通信講座を活用する方もいるくらいです。

②:一定年数の実務経験を積む
公務員として、行政事務を一定年数経験することで受験資格を得られるルートです。

  • 国もしくは地方公共団体の公務員
  • 行政執行法人または特定地方独立行政法人の役員または職員

高卒であれば17年以上、中卒であれば20年以上の実務経験を積むことで、試験を受けることなく行政書士として登録することが可能になります。アンケート結果によると、全体の15.5%がこの制度を活用して行政書士登録を行っています。

③:国家資格を取得する
弁護士・弁理士・公認会計士・税理士の資格を所持している場合、試験なしで行政書士として登録することができます。弁護士や公認会計士などの業務をメインに扱いながら、一部の業務を行うために行政書士登録する方が多いです。

ただし、あくまで行政書士資格はオマケのようなものと考えましょう。なぜなら、どの資格も行政書士よりも取得難易度が高いからです。中には3000時間近い勉強時間が必要になる資格もあります。そのため、現実味の少ないルートとして認識しておきましょう。

行政書士試験に受験資格なし

「士業に関する国家資格=受験資格がある」というイメージが強いですが、行政書士に関しては何も設定されていません。学歴・年齢・性別・国籍など一切問われませんので、誰でも受験できるなど受験ハードル自体は低めです。だからこそ、一定の受験者数を誇っているのでしょう。

行政書士試験に必要な勉強時間

ここからは、行政書士試験に合格するために必要な勉強時間について解説していきます。まず大前提として、法律に関する知識がどのくらい有しているかで必要な勉強時間は大きく変化します。それを加味して、平均的な目勉強時間の目安は600~1000時間ほどです。

1日あたりの勉強時間と800時間達成するのに必要となる月数

1日あたりの勉強時間 1週間あたりの勉強時間 必要となる月数
1時間 7時間 約28ヶ月
2時間 14時間 約13ヶ月
3時間 21時間 約9ヶ月
4時間 28時間 約7ヶ月
5時間 35時間 約5ヶ月半

平均値である800時間を目安とした場合、1日あたり1時間の勉強では合格までに2年以上費やすことになります。2時間であれば1年前後、3時間であれば9ヶ月ほどで勉強時間の目安をクリアすること自体は可能です。

しかし、「勉強時間をクリアした=合格できる」というわけではありません。知識を身に着けた上で過去問をひたすら解き、出題傾向などを理解する必要があります。そのため、答練の熟練度次第では目安以上の期間が必要になることも多いです。

独学で合格を目指す場合

もし独学で行政書士試験合格を目指す場合、800~1000時間ほどの勉強時間を目安に考えると良いでしょう。法律の前知識、自分に合った教材探し、純粋な勉強時間、分からない部分の情報収集などを加味すると、1000時間を超えてしまう方もいます。

そのため、仕事をしながら合格を目指している人は学習スケジュールの管理が非常に重要です。仕事と勉強、休憩のバランスを考えなくてはモチベーションを維持することができません。知識を無理に詰め込むことよりも、自分が無理と感じないレベルで進めていくことが大事です。

「1日2時間程度の勉強時間だと合格できないのでは?と不安に感じてしまう…」という方もいるかもしれません。しかし、人間が集中して勉強できる時間は平均50分とされています。そのため、無理して勉強時間を増やすことよりも、1日2時間でも集中した方が効率的と言えるでしょう。

予備校・通信講座を利用する場合

もし資格予備校・通信講座を利用する場合、合格に必要な勉強時間は500時間が目安となっています。独学の半分ほどの勉強時間となっており、その理由として考えられるのが以下の3つです。

・厳選されたテキストや講義
予備校・通信講座では、講師陣が教材を厳選してくれます。その人のレベルに合ったものを選んでくれますし、講義内容も高品質です。直接教えてもらえるため、理解するスピードも独学より早いでしょう。

・学習スケジュールを作成してくれる
効率的に合格するため、予備校・通信講座では学習スケジュールを組み立ててくれます。合格するための知識を厳選していますので、試験に必要ない知識は省いてくれるのです。

・分からない部分を質問できる
独学では分からない部分が見つかると、すべて自分で解決しなくてはいけません。予備校・通信講座であれば、講師陣に直接質問することができます。これにより、疑問をすぐに解決することが可能です。

通信講座について、詳しくは「行政書士の通信講座おすすめランキング!10社の費用・合格実績も徹底比較」にて解説しています。

他の国家資格との勉強時間の比較

国家資格 勉強時間(目安)
行政書士 600~1,000時間
司法書士 3,000~4,000時間
税理士 2,000~3,000時間
公認会計士 3,000~4,000時間
社労士 800~1,000時間

他の国家資格と比較した場合、行政書士試験の勉強時間が短く感じてしまいます。600~1000時間でも相当な勉強時間ですが、司法書士や公認会計士にもなると3000時間以上は勉強しなくてはいけません。単純な比較で考えると、行政書士試験の5倍近く勉強しないといけないのです。「他の国家資格と比べたらマシ」と考えると、勉強のモチベーションを維持しやすいかもしれませんね。

行政書士試験は独学でも合格できる?

結論から言うと、行政書士試験は独学でも合格を狙うことができます。ただ、簡単な試験ではありません。むしろ独学で挑むこと自体おすすめできないくらい難しい試験でもあります。

行政書士の独学合格が難しい理由

では、なぜ行政書士試験が独学だと難しいのか理由をいくつか見ていきましょう。

①:試験範囲が広く、配分が難しい

行政書士試験の範囲は非常に広いです。詳しくは後述しますが、試験科目も多いため勉強時間をどのように配分するかが重要になります。1つの科目を集中して勉強し満点を取ったとしても、他の科目で平均点以下だと合格基準点を満たさない可能性は十分に考えられるでしょう。

そして、試験本番での時間配分も難しいです。自分の得意科目を先に解いていく、分からない問題をすぐに見極めて後回しにする、記入漏れやミスがないかを見返すなど、時間を有効活用しなくてはいけません。しかし、独学ではこういった配分に関するノウハウを身に着けるのが難しいと言えるでしょう。

②:記述式の試験対策に限界がある

行政書士試験では、マークシート方式と記述式があります。難しいのが記述式であり、文字数は40文字と少なめですが、「自分で文章を考えて答えなければいけない」という部分に苦手意識を持っている方も多いです。とくに表現力が乏しい方にとっては鬼門と言えるでしょう。

そんな記述式試験ですが、独学だとコレといった対策法がありません。その解答が合っているのか、どこが間違っているかを判定してくれる方がいないからです。あくまで「これなら正解として扱ってくれるかな?」という予想の元で進めていかなくてはいけません。

こういった感覚や慣れというのは、長い時間をかけてようやく身に着くものです。特効薬がないというのは、試験を受ける身としてはストレスになってしまいます。そのため、記述式試験の対策を疎かにしたり、勉強自体のモチベーション低下につながってしまうのです。

③:試験科目が多い

行政書士試験の試験科目は、以下のようになっています。

主な内容
法令科目 ・行政法
・民法
・憲法
・基礎法学
・商法や会社法
基礎知識科目 ・一般知識
・文章理解
・行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令
・情報通信や個人情報保護

このように、法令科目と基礎知識科目に分かれており、その中でも細かく分類されているのです。とくに法令科目に関しては法律分野となりますので、一つ一つに要求される専門知識の数は膨大です。法令科目をクリアするだけでも、多くの勉強時間を使ってしまう方も多くいます。

行政書士試験を独学で挑むときのポイント

上記のように、行政書士試験を独学で合格するのは難しいです。しかし、しっかりと対策しておけば合格できる可能性もあります。ここからは、行政書士試験の独学合格を目指す方に、おすすめの勉強法やコツを解説していきます。

自分に合った教材を探す

まず始めにやることは、自分に合った教材を探すことです。読みやすさや理解のしやすさも大事ですが、最も大事なのは「自分の知識レベルに合った内容か」という点です。まったく知識がないのに中上級者向けのテキストを使ってしまうと、学力は思った以上に伸びにくい上にモチベーション維持ができません。

初学者におすすめの選び方
  • 項目ごとにミニ解説が載っている
  • イラストや図解など頭でのイメージのしやすさ
  • 行間が広くて読みやすい
  • ボリュームは多すぎず少なすぎず

専門用語や基礎知識が羅列しているだけのテキストよりも、各項目ごとに解説が載っている方が知識は定着しやすいです。色が豊富でイラストや図解などがあれば、実務におけるイメージもしやすいため覚えやすいでしょう。行間も広めのほうが読みやすいのでおすすめです。

ボリュームに関しては、多すぎず少なすぎずくらいで問題ありません。多いと無駄な知識まで覚えないといけませんし、少なすぎると肝心な知識が欠如してしまう危険性があるからです。口コミやレビューなどを確認し、自分に合った教材を探してみてくださいね。

試験日から逆算し、学習スケジュールを立てる

「何となくテキストを読み漁って問題集・過去問をひたすら解く」という勉強法はあまりおすすめできません。それが得意な方もいますが、できるだけ学習スケジュールを立ててみましょう。コツとしては、合格目標をしっかりと設定してそこから逆算すると立てやすいです。

例えば、2年以内での合格を目指すなら1日あたりの勉強時間にも余裕があります。しかし、1年以内での合格を目指すなら1日あたりの勉強時間も大きくなってしまうでしょう。合格目標を決め手から学習スケジュールを立てないと、試験本番までに試験範囲を網羅できない可能性があります。

学習スケジュールの例
  1. 合格目標を2年以内に設定する
  2. 〇月までに「民法」を終わらせる
  3. 〇月までに過去問を1周終わらせる
  4. 〇月から記述式試験の対策を始める
  5. 〇月の模擬試験を受験する
  6. 〇月の試験本番を迎える

のような感じです。もし余裕がある方は、自分なりのルールを設定するのもおすすめです。難しく考える必要はありません。「毎日〇時間は必ず勉強する」「毎日〇個の専門用語を覚える」といったもので大丈夫です。必ず達成できるルールを設定することで、自信につながります。

行政法と民法をマスターする

行政書士試験の勉強は、「行政法」と「民法」がメインとなります。なぜなら、行政書士試験の合格基準点である300点満点中180点は、行政法・民法の合計配点188点でクリアすることが可能だからです。それだけ行政法と民法が行政書士として重要な科目ということですね。

この2科目をマスターすることで、合格基準点クリアに大きく近付くことができるでしょう。ただし、他の科目を疎かにしていいわけではありません。あくまで勉強する比率を多くするだけであって、他の科目も点数が取れるように勉強する必要はあります。

記述式問題の対策を徹底する

まずは、マークシート方式の過去問を繰り返し解いて85%以上の正答率になるようにしましょう。そうすることで、記述式問題の対策を重点的に行えるようになるからです。対策のコツとしては、以下のようなことを意識してみましょう。

  • 問題文の中にある「真の問題がないか探してみる」
  • その問題に適用されそうな制度や法令を洗いだす
  • 事例に対する制度や法令を洗いだす
  • 文字数や表現法を見直してみる

模試を受けるようにする

行政書士試験の模擬試験を、本番前に必ず1回は受けるようにしましょう。結果ももちろん大事ですが、もっと大事なのは「自分の苦手分野を把握すること」と「試験本番でもミスらないように時間配分に慣れておくこと」です。

行政書士試験の出題内容は、毎年違うものが用意されていることが多いです。つまり、過去問をひたすら解いているだけでは不十分なのです。模擬試験を受験することで、その年の試験本番に出題されやすい問題を知ることができます。

そして、試験本番では緊張などからいつも解けていた問題が解けなくなることもあります。そのため、問題1つ1つに時間をかけてしまう可能性も0ではありません。模擬試験で1問あたりの時間配分を知っておけば、本番でも「考えるべきなのか、一度飛ばすべきなのか」を判断しやすくなります。

行政書士試験の合格率・難易度

ここからは、行政書士試験の合格率と難易度について見ていきましょう。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和5年度 46,991人 6,571人 13.98%
令和4年度 47,850人 5,802人 12.13%
令和3年度 47,870人 5,353人 11.18%
令和2年度 41,681人 4,470人 10.72%
令和元年度 39,821人 4,571人 11.48%
平成30年度 39,105人 4,968人 12.70%
平成29年度 40,449人 6,360人 15.72%
平成28年度 41,053人 4,084人 9.95%
平成27年度 44,366人 5,820人 13.12%
平成26年度 48,869人 4,043人 8.27%
出典:最近10年間における行政書士試験結果の推移
過去10年間で実施された行政書士試験の合格率推移を表にまとめてみました。受験者数は40,000~48,000人となっており、そこまで大きな差があるわけではありません。合格率も10~15%前後となっていますので、合格率だけで考えると取得難易度が高い資格と言えるでしょう。

6割とれれば合格できる

行政書士試験の配点と、合格基準点は以下のようになっています。

配点 合格基準点
法令科目 244点 122点
基礎知識科目 56点 24点
全体 300点 180点

行政書士試験の配点は、300点満点となっており、そのうちの180点以上を取れれば合格となります。正答率で考えると、全体の60%以上に正解できれば合格となるのです。ただし、180点以上取れたからといって確実に合格できるわけではありません。行政書士試験には、「足切り」が存在しているからです。

【足切り】
行政書士試験における足切りとは、「科目ごとに設定された合格基準点をクリアしないと不合格になってしまう」という制度のことです。例えば、法令科目で170点獲得し、基礎知識科目が20点だったとします。合計点は190点ですが、基礎知識科目の合格基準点を満たしていないため不合格になるのです。

ただし、これらは目安であり、毎年合格基準点は問題数や難易度によって変化します。例年よりも問題内容が難しい場合、合格基準点が下がるといった感じです。実際、平成26年度では合格基準点が下がるなどの補正措置が適用されています。あくまで例外ですので、適用されないことを前提に勉強しましょう。

合格基準点のまとめ

  • 全体で180点以上を獲得する
  • 法令科目で122点以上獲得する
  • 基礎知識科目で24点以上獲得する

合格者の受験回数は平均2回

行政書士試験は比較的難しい試験ですので、1回目の試験で合格する人はそこまで多くありません。大学などですでに法律知識が定着している学習経験者であれば1回目での合格も期待できますが、初学者が挑戦する場合の平均受験回数は2回とされています。

そのため、1回目の試験で不合格だったからといって落ち込む必要はありません。それだけ難しい試験を受けているのだと、自分の気持ちを落ち着かせるようにしましょう。そうしないと、勉強のモチベーションが維持できずに勉強をサボってしまう危険性があります。

行政書士一発合格を目指すなら通信講座も検討

ここまで「行政書士試験は独学でも合格できる」と解説してきましたが、効率良く一発合格を目指すなら『通信講座』の利用を検討してみましょう。

通信講座の強み
  • 合格実績のある講師陣が担当するため品質は高め
  • いつどこでも勉強することができる
  • 学習スケジュールや教材を提供してくれる
  • 分からない部分をすぐに答えてもらえる
  • 独学よりもコスパが良くなるケースもある

通信講座で講義を行ってくれるのは、これまでに多くの合格者を輩出してきたベテラン講師であることが多いです。業界でもトップクラスの人気を誇る講師が在籍している通信講座もあります。そんな講師が厳選した教材と映像講義を利用しますので、品質の高さは予備校並みと言えるでしょう。

通信講座ということで、どこでも勉強できる点にも注目です。とくに最近はスマホで勉強できるe-ラーニングシステムを採用していることが多く、ネット環境さえあれば自由に勉強できます。学習スケジュールも提案してくれますので、効率良く勉強していくことが可能です。

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