社労士の平均年収は?勤務による年収の違いや仕事内容、社労士になる方法を解説
2024.11.06 資格に関するコラムPR
「社労士(社会保険労務士)って社会保険のことだけを扱うの?それなら年収低そう…」というイメージを社労士に対して持っている方は意外といます。しかし、実際の業務内容はもっと幅広く、年収に関しても1000万円以上を狙える可能性を秘めているのです。
この記事を読めば、社労士の平均年収はいくらなのか、勤務と開業ではどのくらいの差があるのかを知ることができます。詳しい仕事内容や社労士になるための方法・流れについても解説していますので、気になった方はぜひ参考にしてみてください。
目次
社労士(社会保険労務士)とは?
まずは、社労士(社会保険労務士)がどのような資格なのか解説していきます。
- 社会保険や労働問題のスペシャリスト
- 法律に則った書類作成や手続きの代行を行う
- 相談やアドバイスなどのコンサルティング業務もあり
- 今後も安定した需要に期待できる資格
社労士とは、社会保険や労働問題に関するスペシャリストです。企業が人を雇用する際、必ず法律に則った労働環境にて管理しなくてはいけません。社会保険に関することだけでなく、近年ではパワハラやセクハラといった労働環境の悪化に注目が集まっています。
社労士がいることによって、社会保険に関する相談や手続きの代行を依頼することができます。経験を積むことによって、人事に関する相談やアドバイスを求められることも増えます。社会保険や雇用がなくならない限り需要のある資格と言えるでしょう。
特定社会保険労務士にもなれる
上記のように、社労士は社会保険や労働法などに関する専門知識を用いて、法人・個人に対するコンサルティングを行うのが主な業務です。しかし、指定の特別講習を受講することで「特定社会保険労務士」として活動することができるようになります。
- 講習の修了と試験に合格することで認定される
- 個別労働紛争において代理人としての業務に従事できる
- 社労士の上位資格ではない点に注意
社労士には元々このような権限はありませんでしたが、パワハラやセクハラといった労働環境の悪化・労働紛争の激増によって2007年に社会保険労務士法が改正されました。それにより、法律的なサポートを行えるようになったのです。ただし、社労士の上位資格というわけではありません。
合格率について
特定社会保険労務士の合格率は、以下のようになっています。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2023年 | 892人 | 502人 | 56.3% |
2022年 | 901人 | 478人 | 53.1% |
2021年 | 950人 | 473人 | 49.8% |
2020年 | 850人 | 526人 | 61.9% |
2019年 | 905人 | 490人 | 54.1% |
特定社会保険労務士の合格率は、おおよそ50~60%前後となっています。社労士試験の合格率が16%前後ということを考えると、比較的高めということが分かります。社労士になった上で実務経験がないと受験できないこともあり、受験者数はそこまで多くありません。
ただし、合格率が比較的高いからといって簡単な試験ではありません。合計で63.5時間の厳しい講習がありますし、一回も欠席することができないからです。講習で学んだ知識をインプットするだけでなく、何回も問題を解くアウトプット作業をすることで知識を定着されていきましょう。
社労士の仕事内容
ここからは、社労士の仕事内容について詳しく解説していきます。社労士にしか行えない独占業務などもありますので、ここでしっかりと理解しておきましょう。
1号業務:申請書類等の作成
1号業務は、「社会保険に関する法律・労働に関する法律によって作成が定められている書類の代行」を行うことができます。書類を作成した後の提出代行や、書類作成の手助けやアドバイスを行う相談業務を担うことも多いです。イメージしやすい内容の業務と言えるでしょう。
例えば、企業が社員を雇用すると「社会保険・労働保険」の手続きが必要になります。書類の作成からハローワークや年金事務所への提出も行わなくてはいけず、時間を取られてしまうでしょう。ミスのない書類作成を任せるために、社労士を雇用しているケースがあるのです。
その他にも、「労働保険の概算保険料や確定保険料申告などの作成」などもあります。慣れていないと計算も難しいですし、何回も再提出を依頼されることも珍しくありません。介護休業や育児休業時の手続きに関しても、しっかりとフォローするのが社労士の仕事です。
2号業務:帳簿書類の作成
2号業務は、「帳簿書類の作成」に関する業務です。労働社会保険諸法令には、企業に対して備え付けるべき書類・作成すべき書類がいくつか義務付けられています。例えば、労働者名簿や就業規則などを作成し、それを備え付けておかねばいけません。
しかし、行政機関において手続きする場合、どうしても専門知識が必要になってきます。記載内容のミスをなくすのは当然のことで、法改正によって変更となった部分にも対応しなくてはいけません。作成するだけでも難しいのに、作成した後の対応もしないといけないのです。
さらに、稀ではありますが行政機関が監査・調査に入ってくることがあります。調査時には帳簿書類がチェックされますので、正しい内容で作成しておく必要があるのです。こういった業務をスムーズかつ完璧に行うために、企業では社労士を雇用しているケースが多くあります。
3号業務:コンサルティング
3号業務は、「社会保険や労働問題、年金などに関する相談・アドバイスを行う」という業務です。上記の1号・2号との大きな違いは、3号業務は社労士の独占業務ではありません。つまり、社労士以外の資格取得者でも担当することができます。
しかし、「社労士を取得している方と無資格の方のどちらを信用するのか?」と問われれば、迷わず社労士を選ぶでしょう。就職・転職時にも社労士の資格を持っている方が有利ですよね。独占業務ではないとは言え、1号・2号と比較して社労士の業務の中では重要度が低いというわけではありません。
むしろ、労働管理のトラブル解決のために社労士と顧問契約を結んでいる企業も多いです。例えば、賃金制度や評価制度に関する相談は3号業務に該当しますし、フレックスタイム制や変形労働制のような業務形態に関する相談も該当します。1号・2号と比較すると、経験が必要になる業務と言えるでしょう。
社労士の平均年収はいくら?
社労士は難易度の高い資格ですが、実際にどのくらいの年収を稼いでいるのか見てみましょう。
比較項目 | 社労士 | 一般的な給与所得者 |
---|---|---|
平均年収 | 774万円 | 503万円 |
平均月給 | 52万円 | 34万円 |
年間賞与 | 149万円 | 91万円 |
平均年齢 | 37.2歳 | 43.2歳 |
勤続年数 | 11.9年 | 12.4年 |
平均月収も年間賞与なども社労士の方が高く、平均年齢も社労士の方が若い傾向にあります。つまり、若い内から高収入が狙える資格ということです。ただし、社労士には働き方が2種類あり、実際はどのような働き方をするかで年収は大きく異なってきます。
- 勤務社労士:社労士事務所や一般企業に雇用されて勤務する社労士
- 独立開業社労士:自分で社労士事務などを開業して働く社労士
どちらにもメリット・デメリットがありますので、それぞれ簡単に確認していきましょう。
勤務社労士の場合
社労士事務所や一般企業に雇用されている勤務社労士の場合、平均年収は「400~600万円」となっています。男性と女性で年収も変わってきますが、他の業種と比較して女性でも高収入を狙えるのが特徴です。ただし、雇用する企業によって給与形態は大きく異なりますし、資格手当の有無でも異なるでしょう。
- 安定して仕事を続けられる
- 働き方改革の影響で仕事が舞い込んでくる
- 企業からも重宝されやすい
- 一般社員としての採用になるため給与が高くない
- 社労士資格を活かしにくいケースもある
勤務社労士最大のメリットは、やはり企業に雇用されていることによる「安定感」でしょう。社労士としての仕事をしっかりとこなし、企業が倒産するようなリスクがなければ働き続けることが可能です。近年の働き方改革の影響もあり、企業も社労士の獲得に前向きになっています。
しかし、社労士としてではなく一般社員として雇用されるケースが多いです。つまり、他の一般社員とそこまで給与に差がありません。社労士の資格を完璧に活かすのは難しいでしょう。安定した生活を送りたいならおすすめですが、少しでも自分の価値を上げたいなら働き方を考えた方が良いです。
開業社労士の場合
自分で社労士事務所などを開業する独立開業社労士の場合、平均年収は「1000万円以上」とされています。勤務社労士と比較して倍近い年収を獲得できるチャンスがあり、社労士が目指すべき目標として設定している方も多いです。
- クライアントが増えれば年収1000万円以上が狙える
- 自分が考えた職場環境を作れる
- 開業初期は年収が100~200万円になることも
- クライアントは自分で見つけなくてはいけない
- 廃業のリスクがあるなど安定性に欠ける
独立開業社労士最大のメリットは、前述した通り平均年収1,000万円以上が狙える環境を作れることです。クライアントが増えれば増えるほど年収は増え、事務所も大きく成長していくことでしょう。優秀な社員を雇うこともできますし、評判の良い社労士事務所にでもなれば自然とクライアントも増えていきます。
ただし、安定するまでには時間がかかります。新しいクライアントは自分で探さないといけませんし、大口クライアントと契約できるのも何年後になるか分かりません。クライアント数が少ない開業直後では、年収100~200万円になることも十分考えられます。
最悪なケースになると、まったくクライアントが見つからずに廃業してしまうこともあるのです。得られるものも多いですが、成功が約束されていないこともあって勤務社労士を選ぶ方が増えています。独立開業社労士を目指すのは、現代だとリスクが高いかもしれませんね。
社労士の勤務先・就職先
ここからは、社労士として働く場合に考えられる勤務先・就職先について解説していきます。
一般企業
一般企業に社労士として働く場合、一般社員として雇用されることが多いです。社労士事務所などと契約しないで良いため、コストダウンや連絡の手間・ラグを防げることから重宝されています。ただし、実務経験が有利に働くことも多いため、新入社員として一般企業に就職するのは少し難しいかもしれません。
社会保険や労働問題に対しての業務が多いため、仕事は常に舞い込んでくるようなイメージです。給与は前述した通り、他の一般社員と大きな差はありません。資格手当に力を入れている企業であれば、それだけ年収が上がるため注目してみると良いでしょう。
社労士事務所・社労士法人
社労士1年目の方が就職先と選びやすいのが、「社労士事務所・社労士法人」といった社労士のための企業です。社労士としての資格を存分に活かすことができ、ベテラン社労士も多いため経験を積むにも最適な就職先と言えるでしょう。
ただし、社労士事務所の求人は少し特殊で募集時期によって内容が大きく異なります。とくに給与面に関しては受給性であることが多く、高収入を狙うのが難しい職場です。規模の小さい社労士事務所に就職してしまうと、そもそも仕事を振り分けてもらえないなどのリスクもあります。
もし高収入を狙いたい場合は、社労士会から社労士事務所を紹介してもらいましょう。それであれば比較的給与水準は高く、年収にもある程度期待することができます。ただ、絶対に紹介してもらえるわけではありませんし、紹介されたからといって雇用されるわけではありません。
会計事務所・税理士法人
「社労士が会計事務所・税理士法人に就職しているイメージはない!」という方も多いかもしれません。たしかに、これらの職場に就職しているのは公認会計士や税理士、FP資格取得者というイメージが強いです。しかし、社労士の就職先として考えることもできます。
なぜなら、「会計事務所・税理士法人に相談にくるクライアントは、税務に関する相談だけで訪れるわけではない」からです。つまり、労務に関しても一緒に相談するというケースが増えているのです。こういったワンストップで実施されるサービスが増えていますので、社労士でも十分に働くことができます。
弁護士事務所・弁護士法人
労務に関するトラブル解決や訴訟に対応する場合、労務に関しては社労士が、その他の法律に関しては弁護士が対応することがあります。社労士と弁護士が連携して職務に当たることで、スムーズな課題解決に期待できるのです。もちろん、事務所の労務・人事に関する業務を担当することもありますよ。
コンサルティング会社
コンサルティング会社へ入社し、労務や人事関係に対して相談・アドバイスを行うのも社労士としての働き方の一つです。社労士事務所や社労士法人と併設しているケースもあります。雇用コストの見直し、新しい雇用プランの設計などを行い、相談企業の利益を守るのが主な役目となります。
利益貢献するのが最大の目的ですので、コンサルティング業務の経験が必要になる職場でもあります。新人社労士が雇用されるケースはほとんどありません。ただ、コンサルティング業務を任されるようになれば、独立開業に向けた経験も得られるため人によっては検討すべき職場と言えるでしょう。
社労士試験に合格するだけでは社労士になれない
意外と知られていませんが、社労士試験に合格しただけでは社労士として働くことはできません。試験に合格した上でいくつかの条件をクリアする必要があるのです。この記事の締めとして、そんな社労士として働くまでの流れについて解説していきます。
①:受験資格を得る
まずは、社労士試験を受けるために受験資格を取得しなくてはいけません。受験資格は3つあり、その中の1つでも要件を満たせば社労士試験を受けることができます。
- 学歴要件
- 実務経験
- 指定の国家試験合格
【各受験資格の簡単な概要】
受験資格 | 内容 |
---|---|
学歴要件 | ・大学、短大、高専等卒業 ・大学(短期大学を除く)における修得単位数62単位以上 ・専門学校卒業 ・厚生労働大臣が認定した学校卒業 ・専門職大学、専門職短期大学卒業 ・高等専門学校(5年制)卒業など… |
実務経験 | ・公務員として3年以上の従事 ・社会保険労務士や弁護士の補助に3年以上の従事 ・事業を営む個人として労働社会保険諸法令に関する事務に3年以上の従事など… |
指定の国家試験合格 | ・司法試験予備試験などに合格 ・行政書士試験に合格 ・弁護士 ・公認会計士(旧公認会計士試験第1次・第2次試験を含む) ・不動産鑑定士(旧不動産鑑定士試験第1次・第2次試験を含む)など… |
どの受験資格においても、提出すべき書類が指定されています。提出を忘れると受験資格として認められないので、必ず事前に確認して集めておくようにしましょう。ちなみに、大学在学中でも単位さえ修得していれば受験することは可能ですよ。
②:社労士試験に合格する
受験資格を獲得できたら、社労士試験を受験して合格しなくてはいけません。範囲の広さや科目合格がないなど難易度の高い資格試験です。合格率も例年6%前後しかないため、合格するための勉強法やノウハウを身に着ける必要があります。
上記の受験資格と社労士試験の詳しい内容に関しては『社労士試験の独学合格は可能?難易度や合格率、合格に必要な勉強時間まとめ』にて解説しています。試験概要だけでなく、合格するためのコツなども簡単に解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
③:2年以上の実務経験を積む、または事務指定講習を受講する
試験に合格したからといってすぐに社労士として働けるわけではありません。社労士として登録しなくてはいけないのです。しかし、社労士として登録するには「実務経験が2年以上」もしくは「事務指定講習の受講」が必要になります。
事務指定講習の場合
毎年11月1日~12月1日に申込みが行われている講習で、通信環境に問題なければ家でも受講可能な講習です。実務経験と比較して圧倒的な速さで登録できますので、すぐにでも社労士として働きたい方はこちらがおすすめです。
④:全国社会保険労務士会連合会に登録する
全国社会保険労務士連合会に、社労士として登録します。登録する際に、以下の3つの中から選ぶ必要があります。
◆開業登録
独立開業して社労士事務所を立ち上げる際に必要な登録です。いきなり独立開業するのはハードルが高いように感じますが、将来のことを考えると初めから独立開業を目指すのもNGではありません。
◆勤務登録
社労士事務所や一般企業に社労士として勤務する場合、この勤務登録が必要になります。雇用される側の登録となるため安定感はありますが、社労士事務所なのか一般企業なのかで少し異なります。
- 社労士事務所:別の事業所との契約を行うことはできない
- 一般企業:他の事業所との間でも社労士業務が行える
◆その他の登録
その他の登録とは、社労士独特の登録方法です。その他の登録を行った場合、社労士業務を行うことができません。しかし、研修や法改正などの情報は取得することが可能で、人脈作りに役立てることができます。「今はまだ社労士として働く気はない…」という方は、その他の登録にしておくと良いでしょう。
⑤:都道府県の社会保険労務士会に入会する
最後に、各都道府県に設置されている社会保険労務士会に入会しなくてはいけません。社会保険労務士連合会への登録とセットになっていることは意外と知られておらず、「連合会に登録したけど、社労士会に入会するのを忘れていた」というケースは珍しくありません。これでは社労士として働くことができないです。
入会手続きは、各都道府県の社会保険労務士会の窓口にて行います。連合会への登録もそうなのですが、労務士会への入会にも費用がかかります。入会金と年会費が必要で、都道府県や会員区分によって料金が変わるのが特徴です。都会であれば高い…といったイメージですね。
「それなら田舎の労務士会に入会して東京で働く!」といったことはできません。勤務地もしくは居住地の社労士会にしか入会できないからです。開業する場合でも、事務所の所在地がある社労士会へ入会することとなります。ここまでしてようやく、社労士として働くことが可能になります。