公認会計士はやめとけと言われる理由とは?年収や仕事内容、税理士との違いを解説
2024.12.04 資格に関するコラムPR
公認会計士は三大国家資格として挙げられる資格です。公認会計士の資格取得を考えている人の中には「公認会計士はやめておけ」というネガティブな意見を目や耳にした人もいるのではないでしょうか。
この記事を読めば、なぜ公認会計士がおすすめできない資格・やめとけと言われる資格なのか知ることができます。仕事内容、年収なども交えながら分かりやすく解説していきますので、公認会計士が気になっている人はぜひ参考にしてみてください。
目次
公認会計士の仕事内容
まずは、公認会計士がどのような仕事を行うのか見ていきましょう。会計に関する仕事だと漠然としたイメージはあると思いますが、内容は多岐に渡ります。
監査
公認会計士にのみ許された独占業務は、『監査業務』となっています。監査の中にも細かく業務内容が分かれていますが、「財務書類の監査」や「財務書類の内容を証明する」といったことを担当することが多いです。「法定監査」と「任意監査」に分けることもできます。
財務書類の監査は企業内で重宝され、監査内容の証明は第三者にとっても重宝されます。公認会計士にのみ許されている業務ということで、作成した書類や報告書の信頼性が非常に高いですね。その分だけ責任も発生し、慣れるまではプレッシャーを感じる業務とも言えます。
【法定監査】
法定監査とは、法律によって定められている業務内容のことを指します。例えば、以下のような法律が定められています。
・金融商品取引法による監査
金融商品取引法による監査では、「有価証券報告書」の提出が義務付けられています。この有価証券報告書に含まれている財務諸表には、公認会計士(会計監査人)の監査証明を受けないといけないのです。
・会社法
大手企業や委員会設置会社においては、会計監査人(公認会計士)を配置することが義務付けられています。
【任意監査】
国内の法律に基づいた監査業務以外にも、以下のような監査業務を行うことがあります。
- 一般企業における財務諸表の監査
- 海外の証券取引所に上場している又はしようとしている企業の監査
- 日本企業が運営している海外支店の監査
- 特定目的のために作られた財務諸表の監査
など
近年はグローバル化が進んでいるため、国際的な監査業務も増えています。そのため、英語力も求められるケースも増えているのです。
税務
公認会計士は、税金に関する業務を行うことも可能です。税金関係と言えば「税理士の独占業務」と思い浮かべる方も多いですが、実は公認会計士も税理士の業務を請け負うことができます。なぜなら、公認会計士の資格を取得すれば税理士として登録することもできるからです(試験が免除される)。
- 確定申告書や青色申告書の作成
- 正しい税額や金額が記載されているかの確認
- 節税相談やコンサルティング業務
公認会計士の独占業務ではありませんが、顧問税理士を雇っていない企業では任されることも多いです。
コンサルティング
公認会計士は会計監査の専門家として、ベンチャー企業の「経営コンサルト」として活躍することもあります。大手企業のような安定性はない反面、成長性を見込めるためやりがいと達成感を感じられる業務です。
ただ、いきなりコンサルティング業務を任されることはありません。「公認会計士としての経験を活かす業務」となっていますので、公認会計士のセカンドキャリアとしての側面が強いです。成果を上げれば上げるほど成功報酬も高くなりますので、自分の実力を試したい人に向いている業務と言えるでしょう。
企業内会計士(組織内会計士)
企業内会計士とは、一般企業や行政機関、金融機関に就職し、「その企業(組織)のために働く会計士」のことを指します。公認会計士協会によると、以下のように定義されています。
日本公認会計士協会の会員及び準会員のうち会社その他の法人(監査法人、税理士法人及びネットワークファームに該当する法人を除く。)又は行政機関に雇用され、又はその業務に従事している者(役員に就任している者を含む。)
引用:日本公認会計士協会
リーマンショックを境に監査法人よりも一般事業会社への就職が増えたこともあり、企業内会計士の需要は増加傾向にあります。経験豊富なベテラン会計士はもちろんのこと、若い公認会計士を求めている企業も多いです。ここで経験を積み、コンサルティング会社へ転職するケースも増えていますよ。
公認会計士の主な就職先
ここからは、主な就職先について見ていきましょう。
監査法人
公認会計士試験に合格した9割以上の方は、『監査法人』からキャリアをスタートします。監査法人とは、その名の通り「監査業務を中心に行う法人」であり、公認会計士が5人以上いないと設立できないなど、正に公認会計士のための企業とも言えます。
公認会計士の登録に必要な実務経験が積めるのも、多くの合格者が監査法人を選ぶ理由です。監査証明の他に「業務補助」「実務従事」の要件も満たすことができますので、ここで3年間の実務経験を積み、公認会計士として登録を目指すことになります。
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- あらた監査法人
- 有限責任あずさ監査法人
公認会計事務所
公認会計事務所では、個人事業主・企業を対象に会計事務や財務諸表の作成、税務申告などの業務を行うことになります。税理士として登録できるからこそ、会計・事務のスペシャリストとしても働くことができるのです。
監査法人から監査業務のサポートをお願いされることがあるなど、さまざまな分野で活躍できる職場だと言えます。実際、監査法人で実務経験を積んだ後、公認会計士事務所を設立する方も多いです。それだけ需要がある職場ということでしょう。
税理士法人
前述した通り、公認会計士は税理士登録できるため「税理士法人」で働くことも可能です。大手法人もあれば、少数精鋭で運営している法人までさまざまです。監査業務はまったく行わないため、公認会計士としてではなく税理士として働くようなイメージとなります。
公認会計士としての経験は積めませんが、税理士としての経験・知識を深めることが可能です。そのため、退職後は公認会計士としての知識と税理士としての経験を活かして独立できるケースも増えています。税務の知識を深めたい方、将来的に独立を考えている方におすすめの職場です。
コンサルティング会社
企業経営に関して分析・提案・アドバイスを行うのがコンサルティング会社です。コンサルティング会社によって取り扱うジャンルは異なりますが、公認会計士として就職する場合は「会計領域のコンサルタント」を行うことになります。例えば、経営改善やM&Aアドバイザリーなどです。
近年、財務関連に特化した「FAS(Financial Advisory Service)」と呼ばれるコンサルティング会社も増加傾向にあり、公認会計士が注目している職場でもあります。給与水準が高くやりがいのある職場ですが、その分だけハードワークなので自分の体調を管理する能力が必要です。
一般企業
事業会社の経理職・管理部門において就職するケースもあります。会計実務の複雑化が進んでいるため、会計のスペシャリストである公認会計士の需要が伸びている職場です。企業の経営戦略の要を担うこともあるなど、責任感とやりがいを感じられる職場でもあります。
独立・開業
公認会計士や税理士として経験を積んだ後、独立して自ら公認会計士事務所を開業するケースもあります。経営から雇用まですべて自分の力で始める必要はありますが、組織に属している時よりも高い年収になる可能性があります。いきなり独立するケースは少ないですが、通信講座によっては試験合格後に独立支援を行っているケースもありますよ。
公認会計士はやめとけと言われる4つの理由
ここまで公認会計士の仕事内容や職場について解説してきました。責任感ややりがいのある仕事であるのは分かりましたが、実際に目指すとなると「やめておけ!」と言われることも多いです。その理由について4つほど考えてみました。
①:公認会計士試験の難易度が高いから
公認会計士は、三大国家資格と呼ばれるほどの高難易度資格です。合格率の平均は10%前後となっており、勉強時間の目安は3,000~4,000時間ほどとされています。1日5時間勉強しても2~3年かかりますし、勉強時間をクリアしたからといって確実に合格できるわけではありません。
10年間試験を受け続けたけど合格できなかった方もいるほど難しく、悪い言い方をしてしまうと「ここまでの頑張りがすべて水の泡になった」ということも珍しくありません。
詳しい合格率や難易度に関しては「公認会計士試験の独学合格は難しい!難易度や平均受験回数、必要な勉強時間まとめ」にて解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
②:仕事が激務
公認会計士の業務内容は職場によって異なりますが、試験合格者の9割が就職する「監査法人」の仕事が激務だとされています。近年人手不足に陥っており、一人あたりの仕事量が増えているのも要因の一つです。それに加えて、監査基準の規定が毎年のように増加しているのも要因でしょう。
もう一つ大きな要因と考えられるのが、監査法人の仕事は「株式総会のスケジュールによって進められることが多い」からです。監査法人がどのような状況であっても「大切なのはお客様」というスタンスが浸透しているため、残業して当たり前という仕組みが出来上がっています。
現在は働き方の見直しによって無理な残業を命令されなくなったり、仕事時間外になるとネットワークに接続できなくなるなどの対策がなされています。仕事量が多いことに変わりありませんが、昔ほど激務ではなくなったと言えるでしょう。
③:仕事内容が単調
これは若手の頃に陥りやすい感情です。先輩や上司から「〇〇やっておいて!」と言われるがままに仕事をしていることが多く、どうしてもつまらなく感じてしまいます。仕事内容も単調なため代わり映えがありませんし、新しい発見などは見つかりにくいかもしれません。
ただ、経験を積んでいけば責任者としてプロジェクトを任されることも増えていきます。コンサルティング会社に転職すれば経営戦略の要として活躍することもできますし、「つまらないと感じるのは最初だけだった」という方も多いですよ。
④:資格を取得できても就職できるとは限らない
「公認会計士試験に合格した=就職できる」というわけではありません。自然災害やコロナのようなウイルスの蔓延、金融危機による不景気など、さまざまな要因で働き口は増えたり減ったりします。資格があることは就職に有利ですが、それだけで就職できるような世界ではありません。
公認会計士の資格が必要な職場であれば「資格を持っていて当然」ですし、必要ない職場であれば「意味がない」と言えるでしょう。大切なのは、どれだけその職場に自分のことをアピールできるかです。通信講座の中には就職・転職サポートを提供しているケースもありますので、不安な人は利用してみるのもおすすめです。
公認会計士の平均年収
公認会計士が難しい試験であり、業務内容も大変だということが分かりました。では、それに見合っただけでの給与は貰えるのでしょうか?ここからは、公認会計士の給与について解説していきます。
年齢別の公認会計士の年収
公認会計士の平均年収は経験年数や企業によって大きく異なりますが、年齢別の平均年収は以下のようになっています。
20代:600万円前後
30代:800万円~1000万円前後
40代以降:1000万円以上
20代という若い世代でも600万円の年収が狙えるなど、資格難易度・仕事の内容に見合っただけの年収ということが分かります。40代にもなると1,000万円以上を狙えるなど、 高所得者になれる可能性も高いです。では、もう少し細かく見てみましょう。
企業規模10人以上 | 企業規模100人以上 | |||
---|---|---|---|---|
年齢 | 男性 | 女性 | 男性 | 女性 |
20~24歳 | 433.0万円 | 477.5万円 | 577.7万円 | 598.3万円 |
25~29歳 | 629.5万円 | 482.7万円 | 787万円 | 777.8万円 |
30~34歳 | 748.4万円 | 504.3万円 | 960.2万円 | 649.8万円 |
35~39歳 | 836.6万円 | 675.6万円 | 1,078.7万円 | 777.9万円 |
40~44歳 | 901.2万円 | 662.9万円 | 1,241.1万円 | 915.8万円 |
そして、男女別でも大きな差があることが分かります。20~24歳では大きな差はなく、むしろ女性の方が年収は高い傾向です。しかし、25~29歳になると男性が逆転し、20~34歳になると大きな差になっていますね。その後も男性の方が年収は高いですし、差はどんどん大きくなっていきます。
業種別の公認会計士の年収
続いて、業種別の年収についても見ていきましょう。ここでは、大きく分けて「監査法人への就職」と「一般企業(事業会社)」で解説していきます。
【監査法人の場合】
監査法人にも規模はありますが、基本的にはポジションによって年収が変わってきます。
・スタッフ
入社して2~3年以内の新人ポジションのことを「スタッフ」と呼びます。先輩や上司から指導を受ける立場であり、350~500万円くらいが年収となります。公認会計士としては安いと感じるかもしれません。
・シニア
スタッフとして3年ほど経験し、一つ上のポジションになると「シニア」になります。シニアになると現場の責任者として働くことも増え、年収も一気に600~700万円ほどに上昇します。
・マネージャー
入社して8~10年ほど経験を積むことで得られるポジションで、高度な専門知識・経験を用いてチームをまとめることが多くなります。求められるものが多くなるため誰でもなれるわけではありませんが、年収は800~1,000万円になるなど目指すべき最初のゴールかもしれません。
・パートナー
15年以上の経験を積むことで、共同経営者のようなポジションである「パートナー」へと昇格することもあります。年収も1,500万円以上になることもあり、役職が付けば2,000万円以上を目指すことも可能です。ただし、パートナーになれるのはほんの一握りであり、誰でもなれるものではありません。
Big4監査法人
監査法人のトップであるBig4に就職した場合、どのくらいの年収があるのか少し見てみましょう。
- EY新日本有限責任監査法人
- 有限責任監査法人トーマツ
- あらた監査法人
- 有限責任あずさ監査法人
大手監査法人ということもあり、給与水準は平均年収700~800万円と高めに設定されています。規模も大きく、数多くの案件に対応しなくてはいけないため激務になりがちです。時間外勤務も珍しくありませんので、給与にこだわりがない方は中小監査法人の方が向いているかもしれません。
一般企業
製品やサービスを提供する事業会社(一般企業)に就職した場合、「所属した企業の社員として働く」という業務形態ですので、その人によって給料・年収は大きく変わってきます。とは言え、専門職であることには変わらないため比較的年収は高いとされています。
監査法人ほどの高さはありませんが、長いこと働けば600~800万円ほどの年収になることもあります。大手企業であればさらなる年収アップも狙えますし、部長クラスにまで昇進できれば年収1,000万円超えも珍しくありません。年収アップのコツは、長く働くことが重要な職場と言えるでしょう。
公認会計士の年収アップの方法
平均年収の高い公認会計士ですが、さらなら年収アップを狙う場合は以下のような方法を検討してみてください。
- 監査法人で継続勤務する
- 大手監査法人へ転職する
- 都心の監査法人で就職する
- 会計事務所を独立開業する
- 米国公認会計士(USCPA)資格を取得する
- 社外監査役になる
最も分かりやすいのは、「現在働いている監査法人で継続勤務する」です。一般的なサラリーマンと同様に、勤務年数が長ければ長いほど給与・年収は上がっていきます。監査法人の方が上がり幅も大きく、入社から5年で年収が2倍になるケースもあるほどです。
もう一つ分かりやすいのが、「大手監査法人へ転職する」という方法です。前述したBig4監査法人に転職すれば仕事量は増えますが、それに比例して年収も増えていきます。ただし、在籍人数が多いため競争率も激しくなるなど、心身ともに疲れてしまう可能性もあるため注意です。
自分の実力をすべて年収に直結させたい方は、「会計事務所を開業する」という方法も検討してみると良いでしょう。顧客の信用を集めて結果を出すことができれば、雇用されている時では考えられないような年収になるケースもあります。ただし、倒産したり借金を負うなどリスクもあるためしっかりと考えた上で実践してみましょう。
公認会計士と税理士の違いとは
最後に、公認会計士と税理士にはどんな違いがあるのか解説していきます。結論から言うと、請け負うジャンル自体は近いものの細かい業務内容から試験内容、難易度までまったく異なる資格です。
独占業務の違い
まずは、各資格の独占業務に違いがあります。
公認会計士の独占業務 | ・監査業務 |
---|---|
税理士の独占業務 | ・税務代理 ・税務書類の作成 ・税務相談 |
独占業務の違いを一言で表すと「公認会計士は監査のスペシャリスト、税理士は税務のスペシャリスト」といった感じです。ただし、公認会計士は税理士登録すれば税理士の業務も請け負うことができますので、序列で表すと公認会計士の方が上のようなイメージですね。
業務内容の違い
詳しい業務内の違いを見てみると、公認会計士と税理士では以下のような違いがあります。
公認会計士の業務 | ・財務諸表の作成と監査 ・作成した財務報告書の信頼性や透明性を証明するために評価する ・財務面から分析やアドバイスなどコンサルティング業務を行う |
---|---|
税理士の業務 | ・納税額の計算、税務申告書の作成 ・不利益にならないよう税金の最適化や公正性を確認する ・税務リスクの分析と評価を行って対策の提案 など |
独占業務も違いますが、実際の業務内容もこれだけの違いがあります。同じコンサルティング業務だったとしてもアプローチの方法が違うため、企業によって「公認会計士に依頼するか、税理士に依頼するか」が異なるのです。
就職先や顧客の違い
公認会計士の就職先・顧客 | ・監査法人 ・公認会計士事務所 ・会計事務所 ・企業の内部監査部門 |
---|---|
税理士の就職先・顧客 | ・税理士法人 ・会計事務所 ・企業の内部税務部門 |
税理士は会計や税金に関する法人に就職することが多く、一般企業に就職する場合は税務部門に配属されます。顧客は個人・個人事業主、中小企業であることが多いです。
公認会計士は監査法人への就職が最も多いです。税理士の業務もこなせるため税理士法人や、コンサルティングファームへの就職も考えられます。顧客は、財務諸表を作成しないといけない上場企業・大手企業がメインです。
試験の難易度の違い
試験の難易度に関しては、合格率が最も分かりやすい指標になります。税理士の平均合格率は18~22%前後、公認会計士は8~11%前後です。このことから、税理士の方が約2倍合格しやすいということが分かります。税理士試験が科目別合格制度を導入しているのに対して、公認会計士試験は全試験科目の総得点で合格が決まるという点も、合格率の差に影響しているでしょう。
合格率は税理士の方が約2倍高いですが、合格までの勉強時間目安はそれぞれ以下のようになっています。
公認会計士:2,500~3,500時間
あくまで目安なので事前知識や修得スピードによって前後しますが、2つの資格の勉強時間に大きな差はありません。税理士の方が選択科目の種類が多いため、少しだけ勉強時間が多くなる程度です。合格するまでの機関目安も税理士が2~4年、公認会計士が2~3年ですので、合格率ほどの差はありませんね。
公認会計士は試験なしで税理士になれる
税理士との違いではありませんが、実は公認会計士資格を取得していると税理士試験が免除されます。それに加えて、税理士試験に合格した後に課せられる2年間の実務経験に関しても不問です。
ただし、注意点もあります。税理士として働くためには、資格取得後に税理士登録する必要があります。元々は公認会計士の資格を取得していれば無条件で税理士登録ができていました。しかし、2017年4月1日以降に公認会計士試験に合格した人は、「税法に関する所定の研修の修了」が登録条件となっています。