コーポレートITとは?情シス・社内SEとの違い、「攻めのIT」と呼ばれる理由
2025.11.24 エンジニア転職PR
企業の組織内向けに働くエンジニアの職種が多様化しており、情シスや社内SEという職種に加え、「コーポレートIT」という職種も注目を集めています。
コーポレートITとは、企業全体の価値向上に貢献する「攻めのIT」を推進する役割であり、従来のIT部門が抱えていた課題を解決し、企業を成長させるための重要な存在なのです。
この記事では、コーポレートITの役割や業務内容、情シス・社内SEとの違い、求められるスキル、「攻めのIT」と呼ばれる理由について解説します。
コーポレートITに興味がある方はこの記事を参考にしてみてください。
目次
コーポレートITとは?情シス・社内SEとの違いと役割
コーポレートITとは、プロダクト開発以外の社内のITに関する仕事を引き受ける人、あるいは部署を指します。
「コーポレートIT」という言葉は、従来の「情報システム」という呼称が持つ曖昧さを解消し、より現代的なIT部門の役割と期待を示すために使われるようになっています。
具体的には、企業(コーポレート)の活性化や価値向上に従事するIT人材、およびその所属する部署のことです。
その業務範囲は、基幹システムや業務システムの開発・構築・運用・保守、ネットワークの構築、アカウント・セキュリティ管理、ヘルプデスクなど、社内のITに関わるほぼすべてに及びます。
この名称には、以下のような現代的なニュアンスが加えられています。
• DXやITによる企業価値の向上において役割を発揮すること
• クラウドやSaaSを中心としたIT環境の構築に積極的であること
• DevOpsやアジャイル開発への経験・知見を有すること
コーポレートITは、「コーポレートエンジニア」と称されることもあります。
両者は同じ意味で使われることもあれば、社内ITに関わる部門を「コーポレートIT」、その部門に所属する社員を「コーポレートエンジニア」と区別するケース、あるいは「コーポレートエンジニア」は社内システムのエンジニアリングに、「コーポレートIT」はシステム定着のためのサポートや社内調整に重きを置くなど、役割によって使い分けるケースもあります。
また、社内向けの役割を「コーポレートIT」とするのに対し、社外向けのIT開発・運用に携わる役割を「ビジネスIT」と対比して表現することもあります。
このように、単なる名称の変更にとどまらず、「情報システム」から「コーポレートIT」へのシフトは、企業が社内のIT人材に期待する役割と、現代的なITの位置づけに対する目線が変わったことを明確に示す手段となるのです。
情シス・社内SEとの違い
「コーポレートIT」と「情シス・社内SE」の違いを以下の表にまとめました。
| コーポレートIT | 情シス・社内SE | |
| 主な業務 | • ITを活用した戦略立案や課題解決 • システム自体の抜本的な変更 • 従業員のIT活用指南 • ITインフラの整備・運用 |
• サーバーやネットワーク回線の運用・保守 • ITインフラのためのヘルプデスク対応や障害対応 |
| 役割の特性 | 攻めのIT | 守りのIT |
| 責任範囲 | 「企業全体のIT化と全体最適を担う職種」であり、貢献度が高く責任範囲が広い | コーポレートITと比較すると、責任範囲は狭い |
| 期待される貢献/目標 | • DXの推進担当者ともなり得る存在 • 業務とITを結びつけ、生産性を高める • ITを企業の成長戦略と一体化させ、企業価値の向上に貢献する |
• 社内のITに関する縁の下の力持ち |
従来の「情シス」や「社内SE」と「コーポレートIT(コーポレートエンジニア)」は、一見似たような業務を担いますが、その責任範囲と期待される役割に大きな違いがあります。
従来の情シス(情報システム部の略称)や社内SEは、主にサーバーやネットワーク回線の運用・保守を行い、ITインフラが滞りなく稼働するように、ヘルプデスク対応や障害対応などを基本業務としていました。
「縁の下の力持ち」として位置づけられ、他部署からは「何をしているのか分からない」と言われたり、時には「コストセンター」と見なされることもありました。
対してコーポレートITは、「活用を含めて社内ITの整備や運用等にかかわっていくエンジニア」と定義されます。
従来の情シス・社内SEが守りのITであったのに対し、コーポレートITは、従業員のIT活用を指南したり、システム自体の抜本的な変更を行ったり、多様な対応を通じて業務生産性向上に貢献します。
DXの推進担当者ともなり得る存在であり、ITインフラの整備・運用だけでなく、それらを活用した戦略立案や課題解決までが業務内容に含まれます。
「企業全体のIT化と全体最適を担う職種」であり、最終的には業務とITを結びつけ、生産性を高めて企業の成長に貢献することが求められます。これは、これまでの情報システム部門や社内SEに比べ、貢献度が高く責任範囲が広いことを意味します。
コーポレートITは、単にITインフラを保守・運用するだけでなく、ITを企業の成長戦略と一体化させ、企業価値の向上に貢献することが期待されているのです。
コーポレートITが「攻めのIT」と呼ばれる理由
コーポレートITが「攻めのIT」と呼ばれる理由は、その役割が単なるITの管理・維持に留まらず、企業価値の向上とビジネス成長に能動的に貢献する点にあります。
従来のIT部門が「コストセンター」と見なされたのは、その役割が「縁の下の力持ち」としてのインフラ維持やトラブル対応に終始し、事業への直接的な貢献が見えにくかったためです。
しかし、情報社会が当たり前となり、DX(デジタルトランスフォーメーション)がグローバル競争における重要課題となる中で、ITの位置づけは大きく変化しました。
コーポレートITが攻めのITと呼ばれるのは、以下の役割が課されているためです。
• 企業価値向上への貢献
• 戦略的なIT活用
• 社内へのIT価値浸透
• 能動的な課題解決と戦略立案
企業価値向上への貢献
コーポレートITは、ITとDXを通じて企業の活性化や価値向上に従事することが期待されます。
ITを単なるコストではなく、企業の成長を支える基盤と位置づけ、積極的に活用することでビジネス戦略を支援します。
戦略的なIT活用
従来のIT部門が、ITインフラの安定稼働を基本としていたのに対し、コーポレートITは従業員のIT活用を指南したり、レガシーシステムの抜本的な変更や多様な対応を通じて、業務生産性向上に積極的に関与します。
会社の利益を上げるための視点が求められるでしょう。
社内へのIT価値浸透
コーポレートITの最終的なゴールは、全社的に「このシステムのおかげで業務がやりやすくなった」という実感を広め、それが企業の利益につながっているという認識を得ることにあります。
これは、ITの導入やアップデートの価値を社内のユーザーに実感させ、ITを業務改善と成果に結びつける「社内マーケティング」の視点も含まれます。
能動的な課題解決と戦略立案
組織が大きくなるにつれてITに関する「困った」ことが増え、社内ネットワークがカオスになったり、IT資産が行方不明になったりといった問題が発生します。
コーポレートITは、このような問題を一手に引き受け、専門知識を持って管理することで、安全に社内ITの面倒を見られる存在として必要とされます。
さらに、IT戦略の設計・立案を通じて、経営層と共に経営課題をITで解決していく役割を担います。
コーポレートITは「守り」のITから脱却し、ITの力を最大限に活用して企業全体の変革と成長を推進するという、積極的かつ戦略的な役割を担うことから、「攻めのIT」と呼ばれるのです。
コーポレートITの業務内容

コーポレートIT担当者は、ざっくり言うと「プロダクト開発以外の社内のITに関する仕事を引き受ける人」であり、その業務内容は多岐にわたります。
どの組織においても概ね以下のような業務を担当します。
• 社内ヘルプデスク
• 各種アカウント管理
• 社内ネットワーク管理
• 端末キッティング(会社のポリシーに沿った端末の初期設定)
• 物品調達
• システム導入(Fit/Gap分析含む)
• IT資産管理(各種端末やNW機器、ソフトウェアなど)
• IT監査対応(PマークやISMSなどの認証取得対応や啓蒙活動も含む)
• 上記に関わるベンダマネジメントおよび予算管理
これらに加えて、特にITを重要視している会社のコーポレートITには、さらに以下のような業務が要求されることがあります。
• 組織のDX推進
• IT戦略の設計・立案
• 自動化などの業務改善
• 基幹システム等の保守・運用
組織のDX推進
コーポレートITは、まさにデジタル変革(DX)の推進役として期待されます。
企業のDX推進には、IT技術の理解・活用、内部・外部との交渉、経営やビジネス状況の把握・課題発見といった多角的なスキルが必要であり、コーポレートエンジニアはこれらすべてを兼ね備えているとされています。
基幹システムの刷新やクラウドサービスへの移行を主導し、レガシーシステムからの脱却を図ることで、企業の競争力を高める役割を担います。
IT戦略の設計・立案
コーポレートITの、特に「攻め」の姿勢を象徴する業務が、IT戦略の設計・立案です。
経営層にまで関与するような業務であり、社内のIT設備を把握した上で課題となっている箇所を特定し、対応策を設計・立案し、実現に向けて推進します。
場合によっては、新しいITシステムや機器の導入まで含め、社内全体のIT活用に影響を与える重要な業務です。
これは、単にITを運用するだけでなく、ITをビジネス戦略の一環として捉え、能動的に活用していく姿勢の表れと言えます。
自動化などの業務改善
企業の業務効率化において、自動化を含む業務プロセスの改善は重要な課題です。
コーポレートITは、ITの専門知識を活用して、非効率な業務プロセスを特定し、ツールの導入や開発を通じて改善策を提案・実行します。
これにより、従業員の生産性向上と業務負荷の軽減に貢献します。
基幹システム等の保守・運用
企業の基幹業務を支えるシステムの保守・運用は、引き続きコーポレートITの重要な業務です。
しかし、単なる現状維持に留まらず、基幹システムがレガシー化している場合には、業務効率性の低下やシステムのブラックボックス化といったリスクに対応するため、抜本的な変更にも関与する必要があります。
他の情報システムメンバーと協力しながら、システムのアップデートや刷新を進めることも求められます。
コーポレートITに求められるスキル

コーポレートITは、多岐にわたる業務を担うため、要求されるスキルも多様です。
この仕事を「普通に」こなしている人は、以下のようなスキルを多かれ少なかれ持っています。
ITの幅広い技術と専門知識
コーポレートITに求められるITの幅広い技術と専門知識を以下にまとめました。
| OSに関する知識 | Windows/MacOS/Linuxに関する知識。 |
| ネットワーク知識 | TCP/IPおよびNW機器に関する知識。 社内NWの設計・構築経験も求められることがあります。 |
| オフィススイート | Google WorkspaceやMS365などのオフィススイートに関する知識。 |
| 主要クラウドサービスの知識 | AWSやGCPなどの主要クラウドサービスの知識は必須であり、特にIaaS、PaaS、SaaSの選定と導入、複数のサービスを用いた社内システムの構築・運用経験が重視されます。クラウドファーストの考え方が大前提となります。5年くらい前まで必要とされた物理サーバーに関する知識は、最近の企業では重要視されない傾向にあります。 |
| プログラミングスキル | 業務プロセス改善のためのツールの企画・開発など、内製化に対応できるだけの技術力が求められるため、プログラミングスキルも重要です。 |
| 開発手法の知識 | DevOpsやアジャイル開発への経験や知見も期待されます。 |
| IT資産管理・ベンダーマネジメント | 各種端末やネットワーク機器、ソフトウェアなどのIT資産を管理し、ベンダーとの交渉・管理を行う能力も必要です。 |
コーポレートIT担当者は、元々ITエンジニアとして開発を経験していた人がほとんどであり、高い技術力が求められます。
ビジネスの戦略的思考・PM視点
コーポレートITに求められるビジネスの戦略的思考・PM視点を以下にまとめました。
| IT戦略立案能力 | 社内のIT設備を把握した上で課題を特定し、対応策を設計して実現するためのIT戦略を立案する思考力が必要です。 経営層と連携し、ITを経営課題解決の手段として活用する視点が求められます。 |
| 業務プロセス改善の視点 | 業務プロセスを理解し、ITの力で自動化や改善を企画・実行する能力。 |
| 価値創造への志向 | ITの力を企業全体の価値向上に生かす「攻めの姿勢」が重要です。 ITを「コスト」ではなく「投資」として捉え、企業の利益に結びつける意識を持つこと。 |
| 社内マーケティング能力 | 新規ツールの導入やアップデートの価値を社内ユーザーに実感してもらうための「導線を描く力」や「社内マーケティングのスキル」も重視されます。 |
従来のIT部門が「何をしているか分からない」と言われることがあった点を踏まえ、自身の活動が企業にどのような利益をもたらすかを明確にし、それを社内に周知する能力が求められます。
コミュニケーションスキル
コーポレートITに必要なコミュニケーションスキルは大きく分けて以下の2つです。
| 意思疎通能力 | ユーザーの意図を正確に理解し、自身の要望や解決策を明確に伝えるためのコミュニケーション能力は不可欠です。 |
| 交渉能力 | ベンダーマネジメントだけでなく、社内の各部署や経営層との調整や交渉も頻繁に発生します。複雑な技術的な内容を非技術者にも分かりやすく説明できる能力が求められます。 |
コミュニケーション能力が必要であるため、コーポレートITはゼネラリストに近い広範な知識と、特定の領域での専門性を併せ持つ人材が求められる傾向にあります。
コーポレートITのキャリアパス
採用市場では、DX推進により「市場価値の高いIT先端人材」として需要が高まっています。
コーポレートITの主なキャリアパスとしては、以下のようなキャリアが考えられます。
• 同職種への転職
• コンサルティングファームへの転職
• 外資系企業への転職
• PM職への挑戦
同職種への転職
コーポレートエンジニアとして、別業界に転職するキャリアパスです。
同じコーポレートエンジニア、社内SE、情シスの職種で転職する場合、以下のような点に気を付けて転職先を選ぶとよいでしょう。
経営層や役員のITリテラシーが低いと、社内調整に手間がかかり疲弊する可能性があります。
転職先の想定年収が、市場の相場感と比較して適切かを確認することが大切です。
コンサルティングファームへの転職
コンサルティングファームへの転職は、年収800万〜1,000万円以上を目指せる有力な選択肢です。
マネジメント経験が必要とされ、コンサルティングファームでは常に最新情報や知識のキャッチアップが求められるため、継続的な学習が必須です。
20〜30代前半での挑戦が推奨され、30代後半や40代で挑戦する場合は、顧客折衝スキルやドキュメント作成スキルについて非常に高いレベルが求められる傾向にあります。
外資系企業への転職
外資系企業への転職は、年収1,200万〜1,500万円と最も高い年収レンジを狙える選択肢です。
しかし、AWSやAzureに関するスペシャリストとしての高い知見が求められ、競争も非常に激しいです。
また、日本拠点での募集は開発エンジニアよりもサービスエンジニアやプリセールス(技術的な観点から営業をサポートする)の求人が多い傾向にあります。
そのため、自分で設計・構築や開発をしたい方にはマッチしない可能性もあります。
PM職への挑戦
マネジメント経験で高年収狙いやすい プロジェクトマネージャー(PM)職への挑戦も、高年収を目指せる選択肢です。
マネジメント経験を十分に積むことで、事業会社や受託開発企業を問わず、年収800万〜1,200万・1,300万円で転職できる可能性もあります。
マネジメント経験には、部下の人事評価や1on1ミーティングを行う「ピープルマネジメント」と、プロジェクトの進行管理を行う「プロジェクトマネジメント」などがあり、自チームや転職先に求められるスキルを身に付ける必要があります。
PMの実務経験がなくても、PMに近い経験があれば、高い年収の求人に挑戦できる可能性があります。