税理士試験の独学合格は難しい!難易度や勉強時間、合格しやすい選択科目を解説

2024.10.07 資格に関するコラムPR

税理士試験の独学合格は難しい!難易度や勉強時間、合格しやすい選択科目を解説

税理士は税に関するスペシャリストであり、高い人気がある国家資格です。しかし、税法など法律を取り扱うことから「法律の素人だと合格は難しいのでは?」と思っている方もいるでしょう。とくに独学で合格を目指している方は、勉強前から不安に感じていると思います。

この記事を読めば、税理士試験の難易度、合格に必要な勉強時間、独学合格の難しさについて知ることができます。また、独学で合格を目指す際のコツや短期間で効率よく合格が目指せるおすすめ通信講座についても紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

税理士試験の難易度・合格率

まずは、税理士試験の合格率とそこから分かる難易度について見ていきましょう。2023年度試験までの「一部科目合格者数」と「5科目到達者数」と「合格率」は以下のようになっています。

年度 受験者数 合格者数 合格率
一部科目合格者数 5科目到達者数 合格者の合計
2023年 32,893人 6,525人 600人 7,125人 21.7%
2022年 28,853人 5,006人 620人 5,626人 19.5%
2021年 27,299人 4,554人 585人 5,139人 18.8%
2020年 26,673人 4,754人 648人 5,402人 20.3%
2019年 29,779人 4,639人 749人 5,388人 18.1%
出典:国税庁 税理士試験
受験者数は毎年27,000~30,000人くらいを推移しています。税理士試験に合格するためには必修科目と選択科目合わせて5科目の合格が必要であり、1年ですべての科目を合格するのは非常に難しいです。そのため、一部科目合格者の方が圧倒的に多くなっています。

5科目到達者の平均は600人前後なので、一部合格者と比較すると約1/9ほどしかいません。一部科目合格者と5科目到達者合わせた合計人数で合格率を導き出すと、約20%前後が税理士試験の合格率となります。5科目到達者だけで考えると、さらに低くなることが分かります。

科目別合格率

続いて、税理士試験の科目別合格率についてです。科目数が多いため、今回は2023年度試験のみ表にまとめてみました。

科目 受験者数 合格者数 合格率
簿記論 16,093人 2,794人 23.0%
財務諸表論 13,260人 3,726人 28.1%
所得税法 1,202人 166人 13.8%
法人税法 3,550人 497人 14.0%
相続税法 2,428人 282人 11.6%
消費税法 6,756人 802人 11.9%
酒税法 463人 59人 12.7%
国税徴収法 1,646人 228人 13.9%
住民税 462人 68人 14.7%
事業税 250人 41人 16.4%
固定資産税 846人 146人 17.3%
11科目合計数 46,956人 8,809人 18.8%
出典:令和5年度(第73回)税理士試験結果表(試験地別)
必修科目である「簿記論」と「財務諸論」は受験者数も多く、合格率も23~28%と他の科目と比較して高い水準を誇っています。その他の選択科目に目をやってみると、受験者数に大きな差があることが分かります。これは、純粋に試験の難易度と「合格後の進路」によるものでしょう。

消費税法や法人税法、相続税法が多いのは普段から触れていることが多いためイメージしやすく、将来の進路先で役に立つ可能性が高いからです。逆に、酒税法のような専門知識は受験者数も少なく、合格率自体も低い水準となっています。選択科目の合格率は12~18%ほどで、必修科目と比較しても半分近い数値です。

合格まで最短2年、5~10年かかることも多い

「難しいのは分かったけど、実際にどのくらいの期間で税理士資格を取得できるの?」と疑問に感じている方もいると思います。まず大前提として、税理士として働くためには最短で2年は必要です。なぜなら、「試験合格後に税理士事務所などで2年以上の実務経験が必要」という条件があるからです。

実務経験を除いたらどのくらいで合格できるのかについては、その方の学習環境や事前知識によって大きく異なります。大学で法律について学んでいれば、それだけで初学者よりも有利な状態で始められますよね。それだけ合格までの期間が短くなりますが、それら条件を除いた場合以下のようなイメージです。

①:勉強だけに集中できる環境
もし仕事を休んで勉強だけに集中できる場合、最短でも2年近くの期間はかかると思います。もちろん1年ですべての教科に合格する方もいますが、これはかなり稀なケースです。

②:仕事しながら合格を目指す場合
もし普段仕事をしながら勉強する場合、最低でも3~5年くらいの期間は覚悟しておきましょう。勉強できる時間が少なかったり、独学のみで合格を目指す場合は10年かかるケースもあります。

通信講座であれば、もっと早く効率的に合格を目指すことができますが、それでも1年前から勉強をし始めることが推奨されています。

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③:大学院で勉強しながら合格を目指す場合
税理士試験には科目試験免除制度がありますので、大学院で条件を満たせば合格までの期間を大幅に短縮できます。ただし、確実に認定されるわけではありませんし、コストもかかるため税理士試験のためだけに進学するのはおすすめできません。

税理士試験の独学合格はかなり難しい

試験対策をすべて自分の力だけで終わらせる方もいますが、税理士試験に関しては独学での合格はかなり難しい部類に入ります。その理由について見ていきましょう。

必要な勉強時間目安は3000時間以上

税理士試験は法律を多く取り扱うため、膨大な知識量が必要になります。各科目で必要となる勉強時間は、以下のようになっています。

科目名 出題内容割合 勉強時間の目安
必修科目 簿記論 計算100%/理論0% 450時間
財務諸表論 計算50%/理論50% 450時間
選択必修科目 所得税法 計算50%/理論50% 600時間
法人税法 計算50%/理論50% 600時間
選択科目 消費税法 計算50%/理論50% 300時間
相続税法 計算50%/理論50% 450時間
住民税 計算50%/理論50% 200時間
事業税 計算30%/理論70% 200時間
国税徴収法 計算0%/理論100% 150時間
固定資産税 計算50%/理論50% 250時間
酒税法 計算40%/理論60% 150時間

必修科目だけでも900時間、選択必修科目は600時間、そこに選択科目が2科目必要となります。最も短い国税徴収法と酒税法と合わせて300時間だったとしても、合計1800時間の勉強時間が目安となってしまうのです。1日3時間の勉強でも20ヶ月もかかってしまいます。

もちろん初学者であればさらに時間はかかりますし、計算が苦手な方は簿記論で800~1000時間を費やすケースも珍しくありません。そのため、初学者であれば2,000~3,000時間、学習経験者であれば1,500~2,000時間くらいの勉強時間になると思っておきましょう。

税理士試験の独学合格が難しい理由

ここからは、なぜそこまで税理士試験が難しいのかについて4つほど解説していきます。

学習範囲の広さ

上記の勉強時間目安の表を確認しても分かる通り、税理士試験の範囲の広さは数ある国家資格の中でもトップクラスです。必修科目はその名の通り必ず受験しないといけない科目であり、それだけでも1,000時間近い勉強時間が必要なほど範囲が広くなっています。

選択科目を決めて勉強を始めたとしても、途中で他の科目に切り替える可能性も珍しくありません。得意・不得意というケースもありますし、将来的にやりたい業務が変わることもあるからです。だからこそ、効率良く切り替えるのが難しい独学だと合格するまでに時間がかかってしまう可能性があります。

長期間のモチベーション維持が大変

人によって勉強の好き嫌いは大きく異なります。短時間であれば集中できる方もいれば、勉強することが好きだから何時間でも集中できる方もいます。しかし、大半の方は長期間勉強することに慣れていません。最初は何も感じなくても、徐々に勉強することへのストレスが溜まっていくでしょう。

そのため、勉強をサボるようになってしまったり、勉強中もまったく頭に入らない状態になるのです。このように、最短でも2年かかる税理士試験の勉強のモチベーションを維持するのは非常に難しいと言えるでしょう。

独学用のテキストや問題数が少ない

税理士試験対策は、資格予備校や通信講座を用いることが一般的になっています。そのため、独学用のテキストや問題集を出版している会社が少ないのです。せっかく見つけ出したテキストも自分のレベルに合っていないこともありますし、問題集の中身が充実していないこともあります。

とくに初学者向けのテキストは厳選するのが難しく、適当に探してしまうと逆効果になります。必修科目である「簿記論」と「財務諸表論」であれば受験者数も多いため独学用のテキストの数もありますが、選択科目になると充実していないことの方が多いです。

税制改正など最新情報に対応しづらい

税法はずっと一定なわけではありません。例えば、「消費税」に関しては改正されることが多く、20代~30代の方であれば消費税が5%だった時期が懐かしいと思います。このように、税法は改正される可能性があり、税理士試験の内容も改正した状態で出題されるのです。

このような場合、改正した最新情報を正しい内容で入手しなくてはいけません。しかし、独学だと情報収集も自分で行う必要があります。本当に改正したのか、改正した内容は合っているのか、自分が間違った解釈をしていないかなど、さまざまな疑問点を解決するために時間を使わないといけないのです。

税理士試験を独学合格で挑むときのポイント

もし独学で税理士試験に挑む場合、気を付けるべきポイント、合格するためのコツについて解説していきます。

テキスト選びは慎重に

独学で合格を目指す場合、市販テキストを購入することになります。現在は本屋だけでなく、インターネットでも簡単に購入できるようになっています。しかし、気軽に購入できるからこそ注意しなくてはいけません。なぜなら、テキスト選びが勉強のモチベーション維持や合格までの鍵を握るからです。

テキストの選び方のコツ
  • 自分のレベルに合ったテキストなのか
  • 解説が分かりやすくまとめられているのか
  • 誰が監修しているのか
  • 口コミやレビューの評価はどうなのか

最も大事なのは、「自分のレベルに合ったテキストを選ぶ」という点です。まったく知識のない初学者がいきなり解説付き問題集を購入しても意味がありません。基礎からしっかりと学べるテキストを選ぶようにし、そこから徐々に問題集や過去問などを購入するようにしましょう。

そして、内容も文字だけでなくイラストや図解などが盛り込まれているものがおすすめです。その方がイメージしながら勉強できますし、モチベーションも保ちやすいでしょう。有名な講師や予備校などが監修しているテキストも高品質な可能性が高いです。

試験日から逆算して勉強スケジュールを立てる

独学の場合、学習スケジュールはすべて自分で管理しなくてはいけません。「何年の試験を受験するのか」「今年の合格目標は何なのか」「いつまでに合格したいのか」などを事前に決め、そこに向かうためのスケジュールを作成する必要があります。

こういったゴールを決めることで、試験日から逆算した効率の良いスケジュールを立てることができます。ただし、勉強を詰め込むだけなのはおすすめできません。しっかりと休憩を取ること、勉強しない休みを作ることもモチベーション維持には必要な要素です。

模試試験は必ず受ける

ある程度勉強が進み、自分に実力が付いたと自信が持てたら最低でも1回は模試試験を受けるようにしましょう。自分の実力を確認できますし、得意・不得意科目を見つけ出すこともできます。結果次第でも大きな自信になりますし、それが勉強のモチベーションにつながることも多いです。

そして、「試験本番のような雰囲気に慣れる」というのも大きな役割です。解答ペースがどのくらいなのか、計算と倫理はどの配分で解いてくべきなのか、集中力は最後まで続くのかなど、さまざまなことを模試試験から知ることができますよ。

ただし、開催される度に模試試験を受けるのはあまりおすすめできません。一つ目の理由は、「模擬試験を受けに行く時間がもったいない」と感じるからです。近くで開催しているならまだしも、それなりに移動時間がかかる場合は年に1~2回ほどの受験で問題ありません。

もう一つが、「試験結果が伸びないことでモチベーションが低下する可能性がある」です。すでに高い水準で点数が取れているのであれば点数が変わらなくても問題ありませんが、何回受けても合格点に届かないと勉強のモチベーションは低下していくでしょう。

科目選びが重要

税理士試験合格には必修科目2科目、選択必修科目1科目、選択科目2科目の計5科目で合格点を出す必要があります。選択必修科目と選択科目はその名の通り、自分で受験する科目を選びます。その際、どうやって科目を選ぶべきなのか考えてみましょう。

①:試験の難易度で選ぶ
もし試験の難易度で選びたい場合は、「国税徴収法」と「酒税法」がおすすめです。他の科目と比較して知識量が少なく、出題傾向に偏りが出やすいため対策しやすいのが特徴です。倫理問題が得意な方は国税徴収法、計算問題が得意な人は酒税法をおすすめします。

②:合格率の高さで選ぶ
もし合格率の高さで選ぶなら「固定資産税」「事業税」がおすすめです。これら2つは基礎知識の熟練度が点数に影響しますので、しっかりと勉強すれば合格点をクリアしやすいです。各科目にそこまで大きな差はありませんが、3~5%でも平均して高いのであれば気持ち的にも楽かもしれませんね。

ただし、過去には「固定資産税を試験科目から除外すべきなのでは?」という議論が起こった事例もあります。今後もそういった議論が起これば上記の合格率が高い科目が外される可能性もあるため、情報は逐一確認するようにしましょう。

③:受験者のレベルで選ぶ
税理士試験は相対評価のため、合格基準点をクリアしても合格できるわけではありません。クリアした上で上位〇%に入る必要があります。つまり、周りのレベルが高いと上位に入りにくいですし、逆に低いと上位に入りやすいという特徴があるのです。

そのため、受験者のレベルが低くて競争率が低いとされている「法人税法」「消費税法」を選べば、上位に入る可能性は上がります。ただし、法人税法は覚える知識量が多く、消費税法は定期的に改正がされるなど、デメリットもあるため安易に選ぶのはおすすめできません。

予算にも気を付ける

独学の場合、教材はすべて自分で購入しなくてはいけません。1~3冊くらいであれば通信講座と比較してコスパも良いですが、10冊にもなるとコスパ面でのメリットも薄くなるでしょう。仮に1冊3,000円だったとしても、10冊で30,000円になるわけですからね。

そして、税理士試験には多くの科目があります。つまり、受験する科目分の教材を集めなくてはいけません。テキスト+問題集+過去問で1科目5冊の15,000円だったとして、5科目集めればそれだけで75,000円にもなります。このように、購入する教材を厳選しないと通信講座よりもコスパが悪くなってしまう可能性があるのです。

効率的・短期合格を目指すなら通信講座がおすすめ

もし短期間で効率的に勉強したい人は、独学ではなく「通信講座」の利用をおすすめします。

通信講座の特徴

  • 誰でも気軽に始められる
  • 家でも移動中でも移動先でも勉強できる
  • 厳選されたテキスト、映像講義で勉強を進められる
  • 学習カリキュラムやスケジュールを作ってくれる
  • キャンペーンや割引制度で安く受講することも可能
  • 全額返金制度や合格特典などが付属されている

通信講座最大のメリットは、周りの目やレベルを気にすることなく気軽に始められる点です。まったく知識のない初学者でも恥じる必要はありませんし、教材も家に送られてきます。e-ラーニングシステムに対応している場合、ちょっとしたスキマ時間を活用して勉強もできます。

予備校と同レベルの厳選されたテキストが送られてきますし、映像講義の内容も実際の講義と遜色ありません。どういった流れで勉強していくのか、試験までにやるべきことなども通信講座側が設定してくれますので、自己管理が苦手な人でも安心です。

受講料に関してはバラバラですが、ほとんどの通信講座ではキャンペーンや割引制度を提供しています。それだけでもコスパを抑えることができますし、中には合格特典として受講料を全額返金したり、お祝い金を送ってくれるなどのサービスもありますよ。

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一部科目だけ通信講座を利用するのもアリ!

少しでも受講料を抑えたい方は、すべての科目に対応したコースではなく、科目ごとにコースが分けられている通信講座がおすすめです。

通信講座名 選択可能科目
アガルート 簿記論/財務諸表論、法人税法、相続税法、消費税法、国税徴収法
スタディング 簿記論/財務諸表論、法人税法、相続税法、消費税法、国税徴収法
資格の大原 簿記論/財務諸表論、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税
クレアール 簿記論/財務諸表論、法人税法、相続税法、消費税法
資格のTAC 簿記論/財務諸表論、所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税、酒税法

もし科目数だけで選ぶのであれば、「資格の大原」か「資格のTAC」がおすすめです。とくに資格のTACは酒税法にも対応している珍しい通信講座です。2023年度の合格者も488名と実績も高いですし、サポート制度の充実度も業界トップクラスとなっています。受講料は高いですが、キャンペーンなどでコスパは抑えられます。

コスパも考えたい人は、「スタディング」がおすすめです。業界最安値クラスの受講料を誇っており、教材や講義の品質も悪くありません。何を重要視すべきか分からない方、迷っている方は「アガルート」をおすすめします。受講料・講義内容・サポート制度・キャンペーンなど全体的にバランスが良いですよ。