宅建の難易度はそれほど高くない?合格率や合格点、出題範囲について解説
2024.12.04 資格に関するコラムPR
土地や物件などの不動産が増えていることから、需要が安定しているのが『宅建士(宅地建物取引士)』です。例年20万人以上が受験するほどの大人気国家資格ですが、実際にどのくらいの難易度の試験なのか知らない人も多いです。不動産関係ということもあり、「難しそうだなぁ…」というイメージはあるかもしれませんね。
この記事を読めば、宅建試験の合格率と試験難易度、試験の概要について知ることができます。結論から言うと、宅建試験はそこまで難しくありません。ただ、合格基準点を満たすだけでは合格できないのが宅建試験の特徴と言えるでしょう。
目次
宅建試験の合格率は16%前後
まずは、宅建試験の合格率と難易度について見ていきましょう。今回は、過去5年間の宅建試験のデータを基準に解説していきますね。
過去5年間の宅建試験の合格率と合格点
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|---|---|
令和5年度 | 233,276人 | 40,025人 | 17.2% | 36点 |
令和4年度 | 226,048人 | 38,525人 | 17.0% | 36点 |
令和3年度(12月試験) | 24,965人 | 3,892人 | 15.6% | 34点 |
令和3年度(10月試験) | 209,749人 | 37,579人 | 17.9% | 34点 |
令和2年度(12月試験) | 35,261人 | 4,610人 | 13.1% | 36点 |
令和2年度(10月試験) | 168,989人 | 29,728人 | 17.6% | 38点 |
令和元年 | 220,797人 | 37,481人 | 17.0% | 35点 |
宅建試験は、原則として年に1回しか実施されません。令和2年度、3年度はコロナの影響もあり、会場確保のために例外として2回実施されています。毎年、受験者数は220,000~250,000人くらいを推移しており、合格者数は30,000~40,000人ほどです。
ここから導き出される合格率は、16~17%ほどで推移しています。低くて13.1%、高くて17.9%となっており、そこまで大きな差がないのも特徴です。100人受験したら17人前後しないと考えると、宅建試験の難易度が高めに分類されるでしょう。
合格点は35点前後・正答率70%
例年の合格基準点は、おおよそ35点前後となっており、正答率で表すと70%前後です。合格基準点としては平均くらいですので、ここをクリアするのはそこまで難しいことではないかもしれません。それなのに合格率が低いのには、次のような合格方式が採用されているからです。
宅建試験は相対評価方式
宅建試験の合格基準は、「相対評価方式」を採用しています。相対評価とは、以下の条件を満たすことで合格となる試験方式のことです。
②:①をクリアした上で上位〇%に入っている
つまり、合格基準点を超えたからといって確実に合格できるわけではありません。合格基準点ギリギリだった場合、不合格になる可能性も十分に考えられるのです。そのため、宅建試験の合格率に大きな変動がないのです。
宅建の合格率が低い理由
ここからは、上記の理由以外で考えられる合格率の低い理由について解説していきます。
受験資格がなく、誰でも受験できる
宅建試験には受験資格がありません。受験資格がないということは、学歴や年齢などを気にせず誰でも気軽に受験できます。受験のハードルが低いということで一見良さそうに見えますが、実は合格率に大きく関わってくるのです。
例えば、10,000人受験して3,000人が合格するのと、30,000人受験して3,000人が合格するのとでは合格率が20%以上も差が広がります。このように、相対評価で合格者数の上限がほぼ決まっているのにも関わらず、受験者数が多いから宅建試験の合格率は低いように感じるのです。
これがもし絶対評価であれば、合格率もここまで低くなかったと思われます。「合格率が低い=試験の内容が難しい」というイメージは、相対評価の試験においてはそこまで当てはまらないケースがあると覚えておきましょう。
出題範囲が広い
宅建試験の出題範囲は、以下のようになっています。
- 利権関係
- 法令上の制限
- 税その他
- 宅建業法
- 免除科目
法律に関する範囲が多く、それだけ覚えるべき専門用語や法律が多いです。慣れている方からすれば少ないように感じますが、初学者からするとその専門用語の多さにモチベーションが低下してしまう可能性まで秘めています。
馴染みやすい内容だがすべてを把握するのが難しい範囲、最初は難しく感じるが慣れれば簡単な範囲、ミスができない得点源になる範囲などがあり、スケジュールを組み立てるのも難しいです。その結果、まったく得点が伸びずに合格できない方が多くいます。
合格者数が調整されている
宅建試験の特徴として、平均点が低い場合は合格基準点が下がり、逆に平均点が高いと合格基準点が上がります。それによって毎年の合格率を15~17%前後に調整しているのです。つまり、この合格率になるように合格者数も調整されているのです。
受験者のレベルが上がっている
受験資格がないため受験者数が増えているのに加えて、近年では受験者のレベルも上がっているとされています。SNSやYouTubeなどで勉強のコツやノウハウを知ることができますし、チャンネルによっては映像講義を無料で配信していることもあるからです。
つまり、今までであれば合格できた点数だったとしても、上位〇%に入れない可能性が上がっているということです。「自己採点して例年なら合格できた点数だったのに…」という方が多いのは、これが原因と言えるでしょう。
宅建試験の概要と出題範囲
ここからは、宅建試験の概要と出題範囲、勉強のコツについて解説していきます。
宅建試験の概要
宅建試験の出題形式は、すべて「4肢択一式問題(マークシート方式)」となっています。記述式問題は一切出題されません。4肢択一式問題とは、「正しい答え(誤っている答え)を4つの選択肢の中から選択せよ」というもので、センター試験のようなものをイメージしてみましょう。
マークシート方式ということで、「AとBは確実に違うからCとDだけで考えてみよう!」のような消去法で答えを導くことも可能で、記述式問題と比較して対策しやすい問題でもあります。問題数は全50問ですが、試験時間は2時間あるため比較的余裕はあります。
宅建試験の出題範囲
ここからは、宅建試験の詳しい出題範囲と、それぞれの特徴・点数を取るためのコツについて解説していきます。
科目 | 出題数 | 配点 |
---|---|---|
権利関係 | 14問 | 14点 |
法令上の制限 | 8問 | 8点 |
税その他 | 3問 | 3点 |
宅建業法 | 20問 | 20点 |
免除科目 | 5問 | 5点 |
宅建試験の科目は、大まかに分けて5科目あります。最も出題数が多いのは宅建業法で、次いで利権関係となっています。配点は原則1問1点ですので、「出題数=点数」です。合格基準点を目指すなら出題数の多い科目を中心に勉強したいところですが、それだけで合格できるほど単純な試験ではありません。
上記でも解説した通り、宅建試験は相対評価方式だからです。そのため、どの科目でも高得点を出せるように勉強しなくてはいけません。では、各科目の特徴と点数を取るためのコツ・ノウハウについて見ていきましょう。
利権に関する範囲
利権関連の範囲では、主に民法について勉強することになります。民法の中でも内容は細かく分かれていますが、宅建試験では「売買契約」や「賃貸借契約」に関するルールについて出題されることが多いです。
賃貸借契約:マンションやアパートを借りる際のルール
一人暮らしをしたことのある方ならイメージしやすい内容であり、実際に出てくる内容も普段の生活でも馴染みのある話ばかりです。内容を軽く閲覧しただけでも、「これってこういうことだったんだ…」と興味を持つことが多く、これならやっていけそう!と錯覚することも良くあります。
しかし、利権関連最大の敵はその情報量です。法律中心の内容ですので、出てくる専門用語や単語の数が非常に多く、一つでも勘違いすると他の知識まで間違った覚え方をしてしまう危険性があります。覚えていたと思っていても、問題集を解くとまったく答えられないことも多いです。
- 馴染みやすい内容だが勉強すべき量が多いことを把握する
- 他の科目を犠牲にしてまで勉強しない
- 問題集をひたすら解くこと
法令上の制限について
法令上の制限とは、購入した不動産に対して課せられるさまざまな制限(規則)のことです。例えば、建物の建築に対してさまざまなルールが定められた「建築基準法」などのことを指します。建物の高さや使用できる敷地の広さなどのルールに関することですね。
この範囲最大の敵は、「専門用語の多さ」でしょう。普段の生活ではまず耳にしないであろう用語が多く出てきますし、それの意味を間違えずに覚える必要があります。利権に関する範囲と同様に、覚える知識量に関しては多いため少し慣れが必要です。
しかし、慣れてしまえば利権に関する範囲よりも簡単と言われています。出題も単純な物が多く、重要な問題を繰り返し出題する傾向にあるため、過去問を繰り返し解くことであっさりと合格基準点を超えることも珍しくありません。
- 専門用語を覚えることに集中する
- 過去問を繰り返し解いて傾向を頭に入れる
税その他
税制について出題されます。例えば、元日に不動産を所有している人は「固定資産税」が発生しますし、新しい不動産を取得した際には「不動産取得税」というものが発生します。税金は複雑ですし、計算もしなくてはいけません。そのため、この範囲が苦手という方も多いです。
ただし、公認会計士や税理士といった税に関するスペシャリストほどの知識を求めているわけではありません。難易度的には、税制の入門編のようなものです。苦労するのは最初だけで、用語や解き方さえ理解できれば点数が取りやすい範囲になります。
- 苦手意識で最初から諦めない
- 用語や解き方を覚えれば理解しやすい
宅建業法
「宅地建物取引業法」と呼ばれる法律範囲です。不動産取引に関連する業務を規制している法律のことで、宅建にとって切っても切れない内容となっています。規則のルール自体は単純なものが多く、勉強も他の範囲と比較するとパパッと終わってしまうことも多いです。
しかし、「宅建業法の範囲で点数を取らないと合格できない」と言われるほどの得点源とされており、ここで点数を落とすだけで合格が難しくなります。つまり、どんな出題がされても確実に正解を導き出すこと、ミスしないことが義務付けられているようなものです。
このことから、宅建業法で大事なのは勉強時間よりも「ミスをしない努力・慣れ」が必要とされています。とくに多いのが問題文の読み間違えや、解答欄のミスです。試験本番のプレッシャーに負けないように、自信を持った状態で臨む必要があるでしょう。
- 問題文を何回でも読み直すクセを付ける
- 試験本番でミスしないように何回も問題を解く
免除科目
土地や建物に関する知識や、不動産取引に関する知識を問われます。これまでの試験範囲で学んだことを覚えていれば、ここの範囲はそこまで難しいものではありません。基本的には満点を取れるだけの内容になっています。この範囲に限り、「免除制度」を活用することが可能で、試験開始の時点で5点加算された状態にすることもできます。
免除制度について
宅建試験には、「5点免除」と言われる免除制度があります。この制度を使うには、国土交通大臣が指定している講座を受講し、「登録講習修了者証明書」の交付を受けなくてはいけません。交付されれば、5点分が加算された状態で試験を受けることができます。
- 講習を受けるために受講資格が必要
- 修了試験に合格してから3年以内が期限
- 実施機関によって多少内容が異なる
免除制度を得るためには指定講座を受講しないといけませんが、この指定講座を受講するためには「宅地建物取引業に従事していること」と「従業者証明書の所持」が必要になります。つまり、誰でもすぐに受講できるわけではありません。ただ、業務形態に縛りはないためアルバイトや派遣社員でも可能です。
免除制度が使える期間は、修了試験に合格したその日から3年以内となっていますので、活用するタイミングを忘れないようにしましょう。実施機関によってスクーリングの回数に若干違いはありますが、講義内容や学習時間に違いはほぼありません。
結論:宅建の難易度はそれほど高くない!
ここまで記事を読んできて、合格率の低さに「宅建試験=高難易度試験」というイメージが付いた方もいるかもしれません。しかし、実際の勉強時間や出題範囲のことを考えると、高難易度にまでは達しない試験だと考えられます。
なぜなら、「勉強時間3000時間以上で合格率が10%未満」といった試験が他にも多く存在しているからです。相対評価方式だから合格率が低くなっているだけであり、実際の試験難易度は少し難しいくらいに分類されるでしょう。
宅建試験の勉強時間は、一般的には300~400時間とされています。1日2時間勉強すれば5~7ヶ月、3時間勉強すれば3~5ヶ月ほどで合格を狙うことが可能です。しかし、さらに短時間で効率良く学習するには、『通信講座』の利用をおすすめします。
宅建士のおすすめ通信講座については「宅建の通信講座おすすめランキング5選|費用が安くて、一発合格を狙う方向け」を参考にしてみて下さい。