コロナ禍で始めた高卒採用。成功の秘訣は伝えるツール作成。【ニューノーマル時代の高卒採用成功事例 株式会社筑邦製作所】
2021.02.25
株式会社筑邦製作所
〈企業情報〉
住所:福岡県久留米市荒木町荒木2367-1
設立:1957年
代表:古賀 正道
〈事業内容〉
総合建設業 / 建築鉄骨業
高卒新卒採用・ジョブドラフトを選んだ理由
今までは基本的にはハローワークを通しての中途採用のみ行っていました。
中途採用を行う中で、なかなか会社になじめない方が多く定着率があまり良くなかったことを課題に感じていました。それから新卒で採用して会社で1から教育して行こうと考え、高校生の新卒採用に踏み切りました。
新卒は入社して約3分の1の方が3年以内に離職するとよく耳にします。
しかし、中途採用はさらに離職率が高いと実感しました。特に、前職で同じ業界での経験がある方は、昔の会社と比べてしまう傾向があり、なかなか会社になじめない印象でした。募集職種が工場での加工スタッフであったため、高校生の方がなじみやすいのではないかなと感じ、高校新卒の採用を始めることにしました。
ジョブドラトを通しての採用活動
ジンジブさんにコンサルティングをしてもらいながら採用活動を行いました。コロナの影響で学校訪問が出来ず、パンフレットと求人票を約400校の高校へ送りました。
我々は全く新卒採用をしたことがなかったため、右も左も分かりませんでした。学校への求人票の送り方も学校への訪問の方法も分かりませんでした。パンフレット1つにしても我々だけでは作り切れなかったですし、作ったところで何を載せていいかも分かりませんでした。会社の企業向けパンフレットや求人票だけで、ジンジブさんにお願いしていなかったら高校生は職場見学にも来ていなかったと思います。生徒さんも就職先を決める時には両親に資料を見せないといけません。資料を見せたときに安心して勧めてもらえるように切り口をつくることが大切だと感じます。
今年度の高校生の有効求人数が発表されていましたが、コロナ禍の中でも1人に対して約2社ほどは選択肢がある状況でした。何千件と求人票が届く中で、求人票だけではなかなか応募には繋がらないと思います。目につくことすら非常に難しいです。なかなか自社の魅力を伝えきるというのは難しいので、ジンジブさんがしっかりとコンサルティングしてくださったところに感謝しています。
パンフレットを作成する際にこだわった1番のポイントは、やはり我々の「想い」を伝えることです。どんな思いで高校生を採用しようと考えているのかをどう伝えていくかを考えました。直接高校生に会えない分、こういったツールで伝えていくしかありません。パンフレットに記載されていた資格取得の部分を見て応募しましたという声もあったので、しっかり見てくれているんだなと感じました。
高校生に期待すること
何かをしてもらおうとかその子が入ったことで生産性が上がったというようなことは、すぐには期待していません。
唯一期待していることは、その子が入社することで私たち既存社員の意識が高まり、会社全体の雰囲気が良くなることです。新卒で入社してくれた子たちをしっかり育てて行こうという意識を社員全員に持たせなければなりません。会社としての使命感を持ってほしいと思います。
右も左も分からない中で、怪我なく事故なく先輩たちについていき、人としてしっかり成長できるように会社として方向性をつくっていかねばなりません。そのためには、新卒で入ってきてくれる子たちの力が必要になってくると感じています。会社としてしっかりと想いや考えを社員に伝えていく事が必要になると思います。
入社後は基本的には工場での作業スタッフとして働いていただきます。普通科出身の高校生ばかりで、入社後に鉄骨製作管理技術者、溶接の資格、クレーンの資格など鉄鋼に関わる様々な資格を取得して頂いています。面接に来てくれた高校生にも「ただ一生懸命働くだけでなく、働くことで人生が豊かになってほしいと思います。そのためには勉強もしないといけません」とお話をしましたが、うちの会社に入社したらしっかりと勉強をしてもらいます!費用は会社で全額のサポートをしています。業界に精通する資格を取ることで本人にとって自信にも繋がります。目の前の実務だけではなく、建築鉄骨という分野の学問の知識を蓄えていかねばなりません。そういった部分では、資格取得は非常に重要になってきます。
そういった1人1人の成長が会社の成長に繋がってくると思っています。そのための道筋は経営陣として私がつくっていかねばならないと感じております。
社員たちが両親や友人に自信を持って「ここは私の会社だよ」と言えるようでなければなりません。工場の外壁を塗り直し、事務所を改装しました。錆びていたクレーン車も綺麗に塗り直しました。「綺麗」って本当に大事です。業界のことを知らない一般の方が見ても綺麗だなって思えるようにしておかないとやはり人は集まらないなと感じます。綺麗で嫌な印象を持つ事はありません。一度環境を作ってしまって会社のルールにすることで環境を変えることが出来ます。社員全員で社内の体制づくりと教育環境をつくっていかなければと感じています。
高卒採用を始められる企業様へ伝えたいこと
新卒者への期待というところに戻るのですが、新卒者の方は即戦力になるわけでもなく会社の収益を大きく生み出してくれるわけでもありません。そうではなくて、新卒社員が入社されることによって会社全体が成長していき、まずは我々自身が成長しなければならない環境になります。「我々既存の社員の成長のために高校生の新卒採用を行う」と考えてみてはいかがでしょうかとお伝えしたいです。
だからこそ、新卒社員の期待を裏切らないよう、我々もしっかり勉強しなくてはいけません。入社してくれる新卒社員をどうやって成長させていくか、基本的な考え方を理解した上で具体的にどんな動きを取るべきかこれからも学んでいきたいと思います。
入社後の定着に向けてどんなことを考えられていますか?
当社では月に一度、必ず社員全員と個人面談の時間をとっています。1対1で話しているとそれぞれが一生懸命考えてくれていることが分かります。積もる話で1時間ほど話す社員もいます。そこはしっかり把握しておかねばなりません。
業績を伸ばすために社員を雇い入れるのではなく、社員が増えてきたから業績を伸ばさないといけないという「人が主体」の考えを持っています。
11月の社内全体の会議で来年4月に数名の新卒社員が入社することを伝え、「目の前の収益よりも社員の育成を優先してほしい」と話をしました。
慣れた子にさせたら1日10個出来るかもしれない。初めての子は1日2個かもしれない。それであれば、2個しかできない子にやらせてほしい。目の前の小銭は追わなくていいんです。社員の成長があってこその収益です。18歳や19歳の新卒社員の方が入ってきて定年が60歳と考えたら40~45年間働くことになります。この筑邦製作所も、40年、50年と継続できる会社にならなければなりません。そのためには目の前の収益を追うよりも、社員の育成を優先していかねばなりません。その考え方を社員みんなに理解してもらって、日々の業務の中で実行していってほしいと思います。
初めて高校新卒採用を行うということで、私自身、一生懸命研究しました。色んな本をたくさん読んでいます。やはり中小零細企業は経営者の考えで全ての方向性が決まります。
「どうせすぐに辞めるでしょ」というような考えや、会社の業績によって人員制御をするような会社であれば、先ほどお伝えしたような事は思いません。そうではなく、しっかりと新卒社員を成長させていくためには収益が必要で、但しその収益が会社を永続させるためにその子たちの成長についていけばいいなと感じます。
来年度以降も、継続的に採用を行っていきたいと思っています。うちもこれからなので。もっと良くなっていきますよ!